新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第95回 ブレヒトの『三文オペラ』でハッピーエンドの意味を考えよう

あけましておめでとうございます。
昨年もたくさんの映画を見て、皆さんの感想からいろんな発見ができました。
今年も引き続き楽しい映画を一緒に見たいと思います。
みんなで見ると、それだけ別の視点ができてとても勉強になります。人それぞれ生まれ育った背景が違うので、いろんな視点が増えるのはいいことですね。こんな見方もあるよ、という感想をぜひ聞かせてください。

次回は「音楽もともに楽しむシリーズII」の4回目。

三文オペラ
【Die Dreigroschenoper Beggar's Opera
監督:G・W・パブスト
1931年 ドイツ映画 

イギリスの劇作家ジョン・ゲイの『ベガーズ・オペラ』を元に、ドイツのベルトルト・ブレヒトが改作した有名な『三文オペラ』(1928)をG・W・パブスト監督が映画にした作品。
作曲家クルト・ヴァイルの手がけた劇中歌「メッキー・メッサーのモリタート」は「マック・ザ・ナイフ」というタイトルで、ジャズのスタンダード・ナンバーになっています。そのほか「バルバラ・ソング」など有名曲がお盛りだくさん。

<あらすじ>
ロンドンの貧民街、ソーホーでギャングの親分メッキー・メッサーは乞食の親分ピーチャムの一人娘ポリーに惚れ込み、ギャングの子分立会いのもと結婚する。仇敵メッキーと結婚したと知ってピーチャム夫婦は怒り狂い、警察に通報する。ところがポリーが機転を利かしメッキーを逃がしてやるが、メッキーはお別れに馴染みのバーの情婦ジェニーに会いに行き逮捕されてしまう。

資本家vs.大悪党の映画で、大悪党が処刑され涙のエンディング、ピカレスク映画と思いきや、本当の「悪」とは・・・というブレヒトの特有の謎かけがポイント。
一緒に楽しみましょう。ぜひお越しください。

換気のためドアを開けております。暖房を効かせていますが、防寒対策をお願いいたします。座布団、膝掛けなどは用意しています。

  日時 : 2023年1月29日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第94回 シューマンを生涯支え続けた天才ピアニスト クララ

音楽もともに楽しむシリーズⅡの第3回目のお知らせです。
不思議なバロック風の音楽、オペラと続きました。
次回はシューマンピアノ曲です。
 
 【Frühlingssinfonie】
 監督:ペーター・シャモニ監督
 1983年 西ドイツ・東ドイツ合作映画 103分
 
無名のシューマンが師匠の娘クララと愛し合いますが、ステージパパは二人の恋を認めません。シューマンが娘の金で暮らそうと企んでいると思うからです。でも自分こそがそうですよね。
トロイメライ」の誕生秘話や、メンデルスゾーンパガニーニなども登場し、音楽好きの人にはたまりません。シューマンピアノ曲が映画全編を彩ります。そしてクララを演じるナスターシャ・キンスキーの容姿と演技が光り輝いています。
物語も音楽も堪能できる作品です。
 
換気のためドアを開け放しています。温度の調節できる服装でお越しください。

  日時 : 2022年12月11日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第93回 イングマル・ベルイマン監督がモーツァルトの『魔笛』を演出

前回の『ふたりのベロニカ』なんとも不思議なお話でしたね。
最初一人で観た時は、意味が全然わかりませんでしたが、今回皆さんの感想を聞いているうちに、なんとなく感覚で腑に落ちたというか、特にわからなくてもいいのだと確信したというか・・・。映像がひたすら美しかった。
映画に意味づけを求める必要はないですが、いろいろな伏線や小道具が気になります。

さて、次回の音楽シリーズ第3弾は

 魔笛
 【Trollflöjten】
 監督:イングマール・ベルイマン
 1975年 スウェーデン映画 135分

イングマール・ベルイマン監督が、モーツアルトの『魔笛』を正月のテレビ番組向けに演出しました。脚本もベルイマン監督です。
家族で楽しめるように制作したそうで、観客(自身の娘)や幕間の出演者の様子も映し出されています。スウェーデンのテレビ放送なのでスウェーデン語です。

何度もオペラ『魔笛』をご覧になった人は、ベルイマン監督の演出を堪能できると思います。オペラファンの方がこの会にはたくさんいらっしゃるそうですね。
はじめての方は、『魔笛』のあらすじがよくわかり、とても楽しいと思います。監督の娘の表情が場を盛り上げてくれますよ。

お正月にオペラを家族で見るなんて素敵な国ですね。日本でテレビ放送の能を家族で見るってことあるのかしら?吉本新喜劇ならありそうですが。

だんだん寒くなってきました。暖房を効かせていますが、換気のためにドアを開け放しています。十分に寒さ対策をしてお越しください。

  日時 : 2022年11月13日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第92回 不思議なバロック音楽もともに楽しむ「ふたりのベロニカ」

次回のまちなか勉強会のお知らせです。
新しいシリーズが始まりました。
「音楽もともに楽しむシリーズ 第2段」です。

前回の「音楽もともに楽しむシリーズ」第1弾にどうしても入れたかった作品を、
今回第2弾として観ていきたいと思います。

第1回目

 ふたりのベロニカ
 【La Double Vie de Véronique/Podwójne życie Weroniki】
 監督: クシシュトフ・キェシロフスキ
 1991年  フランス・ポーランド映画 98分

クシシュトフ・キェシロフスキ監督の作品は「ヨーロッパ周縁シリーズ」で『偶然』を上映しました。主人公が列車に乗る時の3つの「偶然」で人生が変わる様子を、当時のポーランドの社会情勢に反映させた大変面白い作品でしたね。
ふたりのベロニカ」もポーランドとフランスに別々に生きる名前も容姿も同じ女性を描いていますが、キェシロフスキ監督は、”もし別の人生だったら”というテーマおが好きなのかしら?

<あらすじ>
同じ年、同じ時期に、ポーランドとフランス、異なった場所に生まれたふたりのベロニカ。名前も容貌も、そして音楽の才能も同じように持ったふたりだったが、ある日ポーランドのベロニカは演奏会のさなか舞台でそのまま息絶えてしまう。その同じ時、言いようのない喪失感に襲われるフランスのベロニカ。それをきっかけに声楽のレッスンをやめることを決心した彼女は、ふと目にした人形劇に魅せられる。

嶋田さんはこの作品に大変思い入れがあるそうで、私には難解しぎて全く理解できなかったので、当日の解説がとても楽しみです。「ふたりのベロニカ」よくわからなかったという方、こぞってお越しください。

音楽はズビグニェフ・プレイスネル。クシシュトフ・キェシロフスキ監督作品の音楽を多く担当しています。バロック音楽のような旋律が不思議と耳に残ります。

  日時 : 2022年10月23日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第91回 『明日へのチケット』人生の地味と希望にあふれた奇跡のコラボレーション

朝晩は秋を感じるようになりました。次回は、ケン・ローチ監督作品のシリーズ最終回です。

 

  明日へのチケット

  【Ticlets】

  監督: ケン・ローチエルマンノ・オルミアッバス・キアロスタミ

  2005年 イタリア/イギリス 115分

今シリーズでは、毎月ケン・ローチ監督による社会の歪みを突きつけられて、「もうケン・ローチはウンザリです」と思われたのではないでしょうか?

というわけで、次回はちょっと違った趣向の映画をご用意しました。

ケン・ローチエルマンノ・オルミアッバス・キアロスタミ、三巨匠監督による夢のコラボレーションです。

三監督がそれぞれ演出して3つのエピソードをつなげてるのですが、オムニバスではなく1本の長編作品になっています。そして誰がどのエピソードを撮ったのかクレジットはありませんが、観てるとすぐにわかりますよ。特にケン・ローチ監督はすぐにわかると思います。

<あらすじ>

ローマへと向かう国際列車に乗り込んだ様々な人種と階級の人々。オーストリアからローマに帰る初老の教授。長い間わがまま勝手に生きてきた未亡人と無気力な青年。スコットランドからサッカー観戦に来たセルティックのサポーターの3人。偶然同じ列車に乗り合わせた乗客たちは、そこで何かと出会い、何かを見つけ、それぞれの新しい人生選択と可能性の物語へと旅立っていく。

全員がカンヌ交際映画祭パルムドール受賞経験を持つ監督の夢のコラボをお楽しみください。

コロナ感染防止のため、椅子・机の消毒、ドアの開放、入り口での手指の消毒を徹底しています。安心してご来場ください。

 

第90回 ケン・ローチが軍事介入の告発を描くと『カルラの歌』

次回の映画会のお知らせです。
ケン・ローチ監督シリーズ第5回目は舞台がニカラグアに移ります。

ケン・ローチ監督の作品で、労働問題をテーマにしたものを続けて2作品見てきました。『ブレッド&ローズ』では労働条件の悪いなか組合を作り立ち上がる中南米の不法移民を描き、『この自由な世界で』では反対に不法移民を劣悪な労働条件と住環境にあてがう派遣会社を描いていました。次回は打って変わって、戦争の告発を主眼としています。

 カルラの歌
 【Carla's Song】
 監督 : ケン・ローチ
 1996年 イギリス映画 127分

<あらすじ>
1987年グラスゴー、バス運転手のジョージは無賃乗車を咎められたニカラグア出身のカルラという若い女性を助ける。彼女は不安定な生活をしており、ジョージが手を差し伸べるうちに恋仲になるが、彼女の傷だらけの背中を見てひるんでしまう。
ジョージは自殺を図るカルラをの助けたいと思い、一緒にニカラグアに行ってニカラグアにいる行方不明の恋人を見つけようと誘うが、実際にニカラグアに来て、ニカラグアの状況とさらに奥の深い事実を知ることとなる。

ニカラグアは何十年もアメリカの傀儡政権の独裁国家でしたが、1979年に革命が起こりサンディニスタ革命政権が誕生します。ところが当時アメリカは、アメリカの息のかかった国でその国自身による政権が樹立した場合、すぐさま軍事介入をして再び内戦を起こしてその政権を転覆させました。新長田まちなか勉強会では『ミッシング』でチリのアジェンデ政権に軍事介入したアメリカの映画を見ましたね。

 

shinnagatamachinaka.hatenablog.com

 


何も知らずに恋心だけでニカラグアに行ったジョージも現地でその事実を知り、打ちのめされます。

ケン・ローチ監督作品シリーズの感想会で毎度名前が出てくる「ポール・ラヴァーティ」という脚本家は、元弁護士で、この内戦における米軍の人権問題に対処しました。その後カルラの歌でケン・ローチと組んで脚本家となり、ケン・ローチ作品とのタッグで数々の賞を獲得しています。

脚本、映像、内戦干渉、恋愛、いろんな感想が出そうですね。いろいろ話し合いましょう。


コロナ感染防止のため、椅子・机の消毒、ドアの開放、入り口での手指の消毒を徹底しています。安心してご来場ください。

  日時 : 2022年8月28日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

第89回 自由のあらゆる意味 「この自由な世界で」

会次回の新長田まちなか勉強会のお知らせです。

前回の『ブレッド&ローズ』は、不法労働で足元を見られ、劣悪な労働条件を飲まざるを得ない移民労働者のお話でした。
主人公のお姉さんローサの告白には胸が詰まり、涙が止まりませんでした。

さて、ケン・ローチ監督作品シリーズの4回目は、移民労働者を雇う側の女性が主人公です。

 この自由な世界で
 【It's a Free World...】
 監督: ケン・ローチ
 2007年 イギリス映画 96分

<ストーリー>
人材派遣業で働くシングルマザーのアンジーは、突然クビを告げられる。仕方なく今までの経験を基に移民労働者を集めて職業紹介所を立ち上げる。
事業を軌道に乗せるために必死で働くアンジーは、ある日不法移民を働かせる方が儲けになると教えられる。もっと金さえあれば、親に預けた一人息子と一緒に幸せに暮らせると考えたアンジーは・・・

 企業が儲ける方法といえば、人件費を安くすることですね。そして主人公のアンジーも当然儲かる方法を考えます。それは両親に預けている一人息子と一緒に暮らすためには仕方なかった? 
 資本主義社会での人間の心の闇をケン・ローチ監督と脚本家のポール・ラヴァーティが見事に描きました。この作品でポール・ラヴァーティは第64回ヴェネツィア国際映画祭で金オッゼラ賞(脚本)を受賞しています。 
 前回の『ブレッド&ローズ』と前々回の『マイ・ネーム・イズ・ジョー』も二人のタッグによる作品です。

 この「自由な」世界での「自由」について話し合いたいですね。
 原題についている「・・・」を省略して欲しくなかったな。

 引き続き換気と消毒に努めます。安心してお越しください。

  日時 : 2022年7月17日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)