新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第137回 監督自らもストリート・チルドレンだった『動くな、死ね、甦れ! 』

前回の「東欧の記憶シリーズ」、ドイツが舞台、監督がハンガリー人という映画『メフィスト』をご覧いただきました。
観賞後の感想会で、現代の私たちは、ナチスドイツにおいて、ホロコーストや言論の弾圧があることを知っているけれども、1933年の政権奪取の瞬間になぜ芸術家たちは国外に逃亡したのかという疑問が出ました。

調べたところ、ナチスは政権を取る10年前から突撃隊(SA)を使って「言論」と「暴力」を全開にしていたことがわかりました。
ヒトラーは党のプロパガンダにおいて、政権を取ったら「マルクス主義者(左翼)やユダヤ人を社会から排除する」「退廃した文化を粛清する」と、あらかじめ公に宣言していました。ですから、芸術家たちは自分たちの表現が完全に止められると直感したのです。
ドイツの役者はドイツ語が使えないところで活躍するのは難しい。けれども、「自由な表現」が奪われるくらいなら、役者として死んだも同然だと考え、言葉の通じない外国へ逃げる苦難を選んだ人に対し、ヘンドリックは、ただ拍手喝采を浴びたいというだけで、魂を売ってでも逃げない道を選んだ。だから「私はただの役者だ」というのはやはり言い訳で、自分に思想がなかったということなのですね。
私だったらどうするかなと考えて込んでしまいました。日本語が通じない世界で、一からやり直すなんてできるのでしょうか。

次回、東欧シリーズは終わって、極東の旧ソ連スーチャン。北海道の西対岸が舞台です。

 動くな、死ね、甦れ! 
 【Замри, умри, воскресни!】
 監督 : ヴィターリー・カネフスキー
 1989年 / ソ連映画 / 105分

<ストーリー>
 第二次大戦直後、ソ連極東の炭鉱町スーチャン。12歳の少年ワレルカと、彼の危機を救ってくれる守護天使のような少女ガリーヤ。
 荒涼とした収容所地帯で、ワレルカのちょっとした悪戯は大事件になっていき、ついに村にいられなくなってしまう。ワレルカのことが気になるガリーヤの淡い想い。しかし、彼らの運命はやがて最悪の結末を迎える——。
 第43回カンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞。

スーチャンはソ連人の収容所と日本人の捕虜収容所がある町です。
劇中音楽は日本人の捕虜が歌う民謡。突然日本語の歌が流れて最初はびっくりしますが、不思議としっくりきています。
とても珍しい作品なので、ぜひご覧ください。

  日時 : 2026年726日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第136回 ナチスに魂を売った役者の運命『メフィスト』

次回の映画会のお知らせです。
 
東欧の記憶シリーズが続いています。
前回の『大理石の男』は、有名なアンジェイ・ワイダ監督の作品ですが、なかなか珍しい作品で、初めてご覧になる方も多かったようです。
たまたま起用されたばっかりに運命を狂わせられた労働者と、それをドキュメンタリーで追っていく若き監督。
いったいどんな結末になるのだろうと、最後までわくわくして2時間40分があっという間に過ぎました。
次の作品も、運命を狂わせられる男の話です。
 
 メフィスト
 【Mephisto】
 監督:サボー・イシュトヴァーン
 1981年 / 西ドイツ・ハンガリー / 144分
 
<あらすじ>
第二次世界大戦前のドイツでナチスが権力を掌握する中、舞台俳優ヘンドリック・ヘーフゲンは義父の力を利用して、『ファウスト』の舞台で人気を博する。仲間や友人がナチスの恐怖政治から逃れる中、あるいは消される中、彼はナチスのパトロンに取り入る道を選ぶ。
実在の役者グスタフ・グリュンドゲンスをモデルとしたクラウス・マンの同名小説が原作。
 
当時の歴史がわかっていればもっと楽しめると思いますが、全くわからなくても大丈夫です。ナチスのプロパガンダとなった映画監督レニ・リーフェンシュタールやプロイセン州首相ゲーリングが出てきます。
もともとブレヒトを演じるような売れない役者が、芝居を続けるためにはナチスにも取り入り、魂も売るという話です。芸術家が食べていくためにはパトロンが必要な状況で、あなたならどうしますか。いつ気がつくかが大事なような気がします。
彼はメフィストではなく、ファウストでしょう。

いろいろ感想が出そうですね。
皆様どうぞ感想会にお越しください。

  日時 : 2026年621日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)



 

第135回 ポーランドの影をワイダ監督が暴く『大理石の男』

次回の映画会のお知らせです。
シリーズ「東欧の記憶」が続きます。
前回のジョージア映画『やさしい嘘』では、おばあちゃんは息子の死を知っていた派と知らなかった派に意見が分かれました。
どちらにせよ、最後の「嘘」には脱帽です。
映画は短かったのに、感想会は結構盛り上がりました。

シリーズ第2回はポーランドの映画です。

 大理石の男
 【Człowiek z marmuru】
 監督:アンジェイ・ワイダ
 1977年 ポーランド映画 160分

<あらすじ>
映画学校の女生徒アグニェシカは、卒業映画制作に1950年代の労働英雄をテーマに決め、博物館の倉庫でかつての労働英雄ビルクートの彫像を発見する。彼の当時の状況やその後を知ろうと関係者への聞き込みを始める。

『灰とダイヤモンド』などで知られるポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督がスターリニズムについて容赦なく批判し、祖国ポーランドの影を描く社会派ドラマ。
長い映画ですが、アグニェシカが労働英雄ビクトールについてガンガン調べていくのをみているうちに、いろんなことがわかってきて最後まで退屈せずに観ることができます。
ぜひお越しください。

  日時 : 2026年517日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第134回 世代で違う優しい嘘『やさしい嘘』

次回の映画会のお知らせです。

シリーズ忘れえぬ時を刻んだロシア映画「時代」「国」「人」が終わり、新しく「東欧の記憶」シリーズが始まります。

前回の『父、帰る』では、みなさんの謎解きが冴えてました。
監督は「答えがない」とインタビューで言っていますが、
車や言動から父親の職業を推測したり、
余所者としての父親、親子の接し方など
みなさんのそれぞれの意見が楽しかったです。
キリストの寝姿や7日間など、キリスト教的解釈は、残念ながらみんなの力でも謎解きはできませんでした。
スターリンや国家の圧力の感想も出ましたが、それを感じなかったという意見が多かったようです。

次回はジョージア(グルジア)が舞台の話です。

やさしい嘘
【Depuis qu'Otar est parti…】
監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
2003年 フランス・ベルギー映画 103分

<あらすじ>
ソ連から独立し経済的な困窮が続くグルジア(現ジョージア)で貧しく暮らすエカおばあちゃんは、娘マリーナ孫アダと喧嘩しながらも仲良く暮らしている。息子のオタールパリで働いており、おばあちゃんは彼からの手紙や電話を何よりも楽しみにしていた。ところがおばあちゃんの留守中、マリーナとアダは彼が事故でなくなったと電話を受ける。おばあちゃんを悲しませないため、二人はオタールのふりをして手紙を書き続けようと決心する。

歴史、経済、政治に翻弄された人々の心の交流が描かれている映画だと思います。
ロシア、ソ連では昔からフランス語が教養として話されていました。

なみなさんの視点で祖母、母、孫娘の考え方の違いなどいろいろ話し合いましょう。

ぜひ、お越しください。

  日時 : 2026年426日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第133回 受け取り方は十人十色『父、帰る』

次回の映画会のお知らせです。
ロシア・ソ連映画シリーズの最終回です。
「忘れえぬ時を刻んだロシア映画「時代」「国」「人」」と題してソ連の国内の様子を半年間観てきました。
第1次ロシア革命の引き金となったポチョムキン号の反乱事件、白軍赤軍で戦ったロシア内戦、大粛清時代、第二次世界大戦時の銃後の様子、原子力の開発。
次回はソ連崩壊後ロシアになった時代のおはなしです。

当初ははソ連時代の映画「モスクワは涙を信じない」を上映する予定でした。フルシチョフからブレジネフ時代のモスクワの様子がわかるおはなしでしたが、2枚組約150分ということでまたの機会に送ることにします。

 父、帰る
 【Возвращение】
 監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
 2003年 ロシア映画 110分

<ストーリー>
ある日、アンドレイとイワンの兄弟の元に12年ぶりに写真でしか知らなかった父親が帰ってきた。当惑する二人をよそに父親は明日から二人を旅に連れて行くという。車の中で父親は、行き先も告げず常に高圧的に振る舞う。兄のアンドレイは父に従うが、弟のイワンは反抗的に振る舞う。三人は魚釣りをし、小さい船で無人島へと向かう。

こんな父親いるよねとか、兄弟で父親への態度が違うのってあるよね、という見方もでできるし、「死せるキリストへの嘆き」という絵画の構図からキリスト教の読み方をすることもできるし、国家権力と人という見方もできるし、絵画的な構図の美しさから楽しむこともできます。
監督も正しい解答はないと言っているそうなので、当日はたくさんの感想をお待ちしています。

  日時 : 2026年329日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第132回『一年の九日』なぜ哲学的と言われるのか一緒に解き明かそう

次回の映画界のお知らせです。

シリーズ『忘れえぬ時を刻んだロシア映画「時代」「国」「人」』が続いています。

前回の『鶴は翔んでゆく』では、「第二次世界大戦中のモスクワはあんなものじゃない。もっと悲惨だった。疎開先で誕生日パーティなんかするはずない」という意見が出ました。
そこできちんと調べてみたのですがが、戦時下のソ連は建前では階級なき社会ですが、実際にははっきりした格差がありました。
医師・技術者・党幹部・文化人などは、配給が比較的よく、住居も恵まれていました。
一方、一般労働者・疎開民などは、食糧不足、過密、寒さ、栄養失調に苦しんでいました。
あの映画は、フルシチョフの雪解け後だったので、スターリン時代には描けなかった戦時の実情を描くことができたのだのですね。
だから、銃後の女性は貞操を守ってフィアンセの帰りを待たねければならないというプロパガンダを描かず、一人で食べていくことができない女性の弱さをきちんと描いたのだと思います。
そしてそのことによって、主人公ヴェロニカの苦悩が始まるから、映画になる=ストーリーになるのだと思いました。

また「疎開先で誕生日パーティなんかするはずない」という意見も出ましたが、田舎はもともと裕福な農民(旧クラーク層)や地元行政の人たちがいて戦時中も比較的楽しく暮らしていたようです。病院から横流しを催促する場面もありましたしね。

そういうわけで、
カラトーゾフ監督が前線の悲惨さと銃後の生ぬるさをきちんと描くことで、夫マークのやってる悪行もヴェロニカの生き方も戦争にありがちの影の側面、じゃあそうやって生き残ってきた人は戦後これからどうやって生きていく?ということを観客に突きつけて、映画が終わったんだと理解できました。

感想会では思いがまとまりませんでしたが、皆さんのいい質問で、私なりに映画の感想がまとまりました。

次回は、もっと多層な感想が出そうです。

 一年の九日
 監督:ミハイル・ロンム
 【Лебятб Лней Олного Яола】
 1961年 ソ連映画 108分

<ストーリー>
グーセフは恋人のリョーリャ、友人のクリコフは三人はとも物理学者で仲間だった。リョーリャはクリコフとの結婚を望んでいたが、結局はグーセフとの結婚を決意する。研究所の側に新居を構えたグーセフは、実験に没頭し、何度か失敗を繰り返した後、中性子の誕生に成功するが、放射能を浴びてしまう。発病した夫の姿にリョーリャは心を痛めるが、グーセフの実験はクリコフが受け継ぐことになった。

男女の恋物語の舞台が、原子力発電の研究だった、という話ではありません。
なぜこの映画が哲学的と言われるのか、みんなで討論しながら考えていきたいと思います。

どうぞお越しください。

  日時 : 2026年222日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第131回 戦争が引き裂いた恋人たち『鶴は翔んでゆく』

次回の映画会のお知らせです。

ロシア、ソ連映画シリーズ「忘れえぬ時を刻んだロシア映画「時代」「国」「人」」が半分終了しました。
このシリーズでは、映画に描かれている出来事を時代順に並べています。
私自身がソ連にあまり馴染みがないので、映画に描かれていることを通してロシア史、風景、人々の暮らしを学んでいるような気がします。

前回の『太陽に灼かれて』は、原題のフランス語題とロシア語題が『太陽にひどい目にあって』というような意味だそうで、
日本語題に惑わされてリゾート地でいい気持ちになっている話かと思っていましたが、
太陽=スターリンということで、当時の何かと理由をでっち上げて粛清できる怖いお話でした。
映像はまるでチェーホフの芝居を見てるようで、映画でいえば『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』を彷彿とさせるものでした。

次回は時代が第二次世界大戦へと進みます。

 鶴は翔んでゆく
 【Летят журавли】
 監督:ミハイル・カラトーゾフ
 1958年 ソ連映画 97分

<あらすじ>
ボリスとヴェロニカは愛し合っていたが、ボリスは志願兵として前線に行くことを決意する。彼はヴェロニカの誕生日の贈り物に、バスケットを持ったリスのぬいぐるみを残し、その下に手紙を添えた。
モスクワで爆撃が始まり、ヴェロニカの両親は亡くなってしまう。ヴェロニカはボリスの家に身を寄せ、ボリスからの知らせを待つが、ヴェロニカに恋している従兄弟のマークは、彼女にアプローチを続け二人はとうとう結婚することになる。


出征した恋人の帰りを待ち続ける若い女性の心の揺らぎを描いた感動作。
1958年度カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。
カラトーゾフ監督はスターリン政権下では厳しい検閲を受けたが、スターリン死後に公開された本作が海外で高い評価をうける。

2025年も皆さんと映画の感想で盛り上がり、大変楽しいひと時を過ごせました。
本当に皆さんの慧眼に感心するばかりです。
2026年も引き続き観賞後に深いお話ができることを楽しみにしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

  日時 : 2026年125日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)