新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第109回アメリカのメタファー第2弾『マンダレイ』

次回の映画会のお知らせです。

ついにアメリカシリーズが最終回となりました。
前回の『ドッグヴィル』はアメリカシリーズなのにデンマークの監督でしたが、実によくアメリカの縮図になっていたと思います。
よそ者はここの文化を受け入れ、みんなに気に入られるように暮らすんだぞ。でも搾取されて当然だよ。そしてそれらはちゃんと話し合いと投票で決められた民主主義なんだよって。
キリスト教のモチーフや名前もたくさん出てきていました。感想会でいろいろ見つけ出しましたが、すべてわかるともっと楽しめたと思います。あの陶器の人形は七つの大罪をモチーフにしていたのかしら?近くで見たかったな。

さて、次回は『ドッグヴィル』の続編です。
車に乗ったグレースと父親はドッグヴィルを後にしてマンダレイという町にたどり着きます。

 マンダレイ
 【Manderlay】
 監督:ラース・フォン・トリアー
 2005年 デンマーク映画 139分

<あらすじ>
グレースと父親とギャング団は、アメリカ南部のマンダレイ大農場の前で黒人の女に助けを求められる。そこでは70年も前に廃止されたはずの奴隷制度が依然として存続していた。使命感に駆り立てられたグレースは父の制止を振り切り、黒人たちを解放して自由な共同体を作ろうと行動を起こすが・・・。

ニコール・キッドマンブライス・ダラス・ハワードに交代していまが、前作『ドッグヴィル』に引き続き、床に枠線や説明の文字を描いた舞台のようなセットとジョン・ハートによる詳細なナレーションは引き続き同じです。
脇役だった俳優も別の役で出演しています。

衝撃のラストです。単なる黒人解放の話ではありません。ぜひみんなで感想を言い合いましょう。楽しみです。

  日時 : 2024年3月17日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第108回芝居の手法で正義を振りかざすアメリカを描く『ドッグ・ヴィル』

次回の映画会のお知らせです。
アメリカシリーズ第5作目はデンマークの監督ラース・フォン・トリアーによるアメリカを舞台にした映画です。
アメリカのドッグヴィル(犬の村)という名の村で起こったできごとを描くことで、自分が正しいと思っている普通の人々の暴走を描いています。アメリカ人だけでなく全世界の人間に当てはまるでしょうね。

 ドッグヴィル
 【Dogville】
 監督: ラース・フォン・トリアー
 2003年 デンマーク映画 177分

<あらすじ>
 大恐慌時代のロッキー山脈の町ドッグヴィルに、ギャングに追われた女が逃げ込んでくる。ひとりの男が彼女をかくまい、村の人に彼女に奉仕させるこでと村に受け入れることを提案する。
 ところが村人のエゴが次第にエスカレートしていく。 

体育館のような広い建物の床に白い枠線と説明の文字を描いたセットで撮影され、ジョン・ハートによるナレーションが登場人物の心理を解説するという実験的な作りです。
トリアー監督はベルトルト・ブレヒトの『三文オペラ』に触発されたと語っていますが、ドアを開ける動作でそこにドアがあることを表したり、文字で物を表現したして、ブレヒトの芝居によくある手法ですね。
実際に主人公が『三文オペラ』の「海賊ジェニー」の歌を口ずさみます。

感想や意見がたくさんでそうですね。
なぜ監督は芝居の手法を選んだと思われますか?
みなさんのそれぞれの視点や感性を交換し合いましょう。

いつもより1時間早く14時から始まります。お気をつけください

  日時 : 2024年2月18日(日) 14:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第107回 インディーズ映画の父カサべテスの『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』

2023年も充実したラインナップで終えることができました。
前半の「女シリーズ」では、かなり論議を呼ぶ映画を選びました。
特に『私の20世紀』では1900年の女性蔑視をおとぎ話のように描いていて、2度と見たくないと文句を言われたのが印象的でした。
監督の意図をかなり正確に受け取っているのではないでしょうか。と私は思います。
後半の「アメリカシリーズ」はアメリカの清濁合わせのむ映画を選んでいます。
アメリカは問題もたくさんありますが、度量の大きな映画もたくさん作っています。次の作品もその一つです。

 チャイニーズ・ブッキーを殺した男
 【The Killing of a Chinese Bookie】
 監督 : ジョン・カサベテス
 1976年 アメリカ映画 134分

<あらすじ>
 ナイトクラブのオーナー、コズモは借金を完済した祝いの席でギャンブルをし、マフィアに再び多額の借金をしてしまう。マフィアは借金を帳消しにする代わりに、中国人のノミ屋を殺すことを提案する。


主人公コズモは、インディペンデント映画の父といわれるカサベテス監督自身を投影しており、それを監督の盟友ベン・ギャザラが哀愁たっぷりに好演しています。

コズモは窮地に陥っても、自分のナイトクラブが気になってしょうがないので、この映画はギャング映画というよりは、ナイトクラブ愛を描いているように感じます。
みなさんはどう感じましたか?

新長田まちなか勉強会では、実際に顔を付き合わせて意見を言うことを大切にしています。
特に映画はそれぞれ違う視点で見ているので、それを交換しましょう。
解釈は自由。何を読み取ったか聞かせてください。

  日時 : 2024年1月21日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第106回『ノーマ・レイ』実話を元にした爽やかな感動

次回の映画会のお知らせです。
アメリカシリーズの第3回目。アメリカの闇を2回続けて観ましたので、次は爽やかな社会派ドラマです。
アメリカ南部の紡績工場で働くふしだらな女性が労働運動に関わることで、次第に自立し、成長していく話です。

 ノーマ・レイ
 【Norma Rae】
 マーティン・リット監督
 1979年 アメリカ映画 119分

<あらすじ>
アメリカ南部の紡績工場で働くノーマ・レイは無教養で、子ども二人を父と母に預け毎晩飲みに出かけるようなふしだらな女。ノーマの両親も同じ紡績工場で働いているが、工場には組合もなく、みんな疲れ切っている。
ある日、工場に組合を組織するため、一人の活動家がニューヨークから派遣されて来た。彼は工員たちにビラを配り、彼らがいかに工場から搾取されているかを教えた。ノーマは活動家に触発され、次第に組合結成にのめり込んでいく。

こういう映画の場合、たいてい男と女は恋愛関係になるのですが、この二人はそういった関係にならないところがいいですね。
ノーマの成長と仲間の連帯が感動を呼びます。

第52回アカデミー賞主演女優賞・歌曲賞をはじめ、第32回カンヌ国際映画祭最優秀女優賞なども受賞。

どうぞお越しください。
皆さんの職場はどうですか?風通しがいいですか?いろいろ感想を聞かせてください。

  日時 : 2023年12月17日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第105回 アメリカが抱える社会問題が家族にふりかかる『アメリカン・ビューティー』

次回のビデオ上映会のお知らせです。

前回から始まった「アメリカシリーズ」では、自国の社会問題を取り上げ、それを見事に料理できる「アメリカの懐の深さ」をみんなで鑑賞していきたいと思います。

『ワグ・ザ・ドッグ』はフェイクニュースの怖さはもちろんのこと、伝えない・報道しないという怖さも皆さんの感想に挙がりました。また、オリンピックやワールドスポーツなどで愛国心を盛り上げ、それを報道することでいろんな問題から国民の目を逸らす政府のやり口も指摘されました。ダスティン・ホフマンロバート・デ・ニーロが生き生きと楽しそうに演じているという意見もありましたね。

さて次回は、人々の抱える問題に溢れる映画です。

 アメリカン・ビューティー
 【American Beauty】
 サム・メンデス監督
 1999年 アメリカ映画 122分

<ストーリー>
郊外の洒落た住宅に住む夫婦と一人娘。一見幸せそうに見えるが、実は夫婦仲は冷め、娘は父親を毛嫌いしている。
そこへゲイ嫌いの父親と息子がが隣に引っ越してきてから、何もかもが雪崩のように崩れていく。
リストラ、娘の友人への性的妄想、妻の浮気、娘の駆け落ち……。そして衝撃的なラスト。
アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞の5部門を獲得、その他世界的な受賞多数。

アメリカだけでなく、日本や全世界が抱えている社会的矛盾がいろいろと描かれていそうですね。どんな感想が出るでしょうか。

映画の感想会は視点の交換会です。いろんな視点をもらうことで自分の意見も膨らみます。感想はそれぞれ違って当然です。

ぜひお越しください。

  日時 : 2023年11月19日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第104回 『ワグ・ザ・ドッグ』はコメディ映画だけどホラー映画

新しいシリーズが始まりました。
アメリカシリーズです。
「シリーズアメリカの影」または「シリーズアメリカの暗澹」などと題したかったのですが、アメリカに限らず世界のどこでも起こっていることなので、
とりあえず「アメリカシリーズ」。

第1回目は、今現在も話題になっているフェイクニュースの映画です。
この映画が作られた1997年はハリウッドお得意のCG加工でやっていたのですが、今では誰でも素人でも簡単に画像編集できてしまうので、もっと節操なく怖いことができますね。
そうですコメディ映画ですが、ある意味ホラー映画なのです。

 ウワサの真相 / ワグ・ザ・ドッグ
 【Wag the Dog】
 監督 : バリー・レビンソン
 1997年 アメリカ映画 97分

<ストーリー>
大統領選挙中に現職大統領がセックス・スキャンダルを起こした。揉み消し屋のコンラッドロバート・デ・ニーロ)はスキャンダルを国民の目からそらすため、もっと衝撃的なニュースをでっちあげる。それは架空の戦争を報道することだった。ハリウッドの敏腕プロデューサー、スタンリー(ダスティン・ホフマン)と協力して、でっち上げ「ショー」が始まる。

湾岸戦争の映像も私がやった」とか、'We are the World' を彷彿とさせる愛国歌の製作など、映画を見ながらおかしくておかしくて笑いが止まりません。
映画のプロデューサーは称賛されないってダスティン・ホフマンが愚痴るシーンがありますが、プロデューサーってすばらしい仕事だなと感心してしまいます。いやいや、悪いことしてるから感心したらあかんがな。

ベルリン国際映画祭審査員特別賞受賞、のほかアカデミー賞ゴールデン・グローブ賞ノミネートで、アメリカの自虐の潔さを感じました。
しかしながら今もフェイクニュースが飛び交ってるので、自浄作用はなかったようですね。

この作品から何を読み取りましたか?聞かせてくださいね。

  日時 : 2023年10月22日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第103回 『ヴェロニカ・ゲリン』暴力に屈しない女性が社会を変えた

次回の映画会のお知らせです。

「女性シリーズ」最後の作品になりました。
このシリーズで、働いて夫を支えるシューマンの妻、教育を与えられないモーツァルトの姉、ナチスに意見する女の子、電話で繋がっているのに心が繋がっていない女性、科学が進む20世紀の女性など、いろいろな女性を見てきました。
先日の『私の20世紀』では「お金を積まれても二度と見たくない映画」という感想もありました。監督の「挑発」が効いたということでしょう。この「挑発」という言葉も感想会で出ました。科学が発達し便利な世の中になるはずなのに、女性は顔と胸だけで認識され、母か娼婦のどちらかになることが求められていた時代でした。過去形で書きましたが、21世紀になった今もそのような認識が払拭されたとは言い切れないのが残念です。

さて来月はとてもわかりやすい映画です。
『私の20世紀』がわかりにくくて嫌になった方はご安心ください。楽しんでいただけると思います。

 ヴェロニカ・ゲリン
 【Veronica Guerin】
 監督:ジョエル・シュマッカー
 2003年 アメリカ映画 98分

<ストーリー>
1994年、アイルランド、ダブリンの最大手新聞社サンデー・インディペンデントに勤めるヴェロニカ・ゲリンはギャングと麻薬の関連を突き止めるため、単身関係者に取材し、記事を掲載する。
ところがそのせいでギャングから執拗な脅迫を受けるようになる。
しかし、ヴェロニカは恐怖心を抑え、犯罪組織を相手に記事で戦いを挑み続けるが・・・

実在のジャーナリスト、ヴェロニカ・ゲリンの勇気と正義感をケイト・ブランシェットが体当たりで好演しています。

9月は少しは涼しくなっているかしら?
会場は涼しいので、どうぞお越しください。

  日時 : 2023年9月24日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)