新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第103回 『ヴェロニカ・ゲリン』暴力に屈しない女性が社会を変えた

次回の映画会のお知らせです。

「女性シリーズ」最後の作品になりました。
このシリーズで、働いて夫を支えるシューマンの妻、教育を与えられないモーツァルトの姉、ナチスに意見する女の子、電話で繋がっているのに心が繋がっていない女性、科学が進む20世紀の女性など、いろいろな女性を見てきました。
先日の『私の20世紀』では「お金を積まれても二度と見たくない映画」という感想もありました。監督の「挑発」が効いたということでしょう。この「挑発」という言葉も感想会で出ました。科学が発達し便利な世の中になるはずなのに、女性は顔と胸だけで認識され、母か娼婦のどちらかになることが求められていた時代でした。過去形で書きましたが、21世紀になった今もそのような認識が払拭されたとは言い切れないのが残念です。

さて来月はとてもわかりやすい映画です。
『私の20世紀』がわかりにくくて嫌になった方はご安心ください。楽しんでいただけると思います。

 ヴェロニカ・ゲリン
 【Veronica Guerin】
 監督:ジョエル・シュマッカー
 2003年 アメリカ映画 98分

<ストーリー>
1994年、アイルランド、ダブリンの最大手新聞社サンデー・インディペンデントに勤めるヴェロニカ・ゲリンはギャングと麻薬の関連を突き止めるため、単身関係者に取材し、記事を掲載する。
ところがそのせいでギャングから執拗な脅迫を受けるようになる。
しかし、ヴェロニカは恐怖心を抑え、犯罪組織を相手に記事で戦いを挑み続けるが・・・

実在のジャーナリスト、ヴェロニカ・ゲリンの勇気と正義感をケイト・ブランシェットが体当たりで好演しています。

9月は少しは涼しくなっているかしら?
会場は涼しいので、どうぞお越しください。

  日時 : 2023年9月24日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第102回 『私の20世紀』女性にとって20世紀はどんな時代ですか

毎日毎日暑いですね。
こう暑いと何もする気が起こらない、と思ってるうちに次回の映画会のお知らせが遅くなってしまいました。
すみません。言い訳でした。

「女シリーズ」もあと2回になりました。
前回の『トリコロール赤の愛』では、つながっているのに心がつながっていないという感想から、これはEUを象徴しているのだという感想まで幅広く出ましたね。
次回もいろんな感想が出そうな映画です。

 私の20世紀
 【Az en XX. szazadom】
 監督:イルディコー・エニェディ
 1989年 ハンガリー・西ドイツ合作映画 102分

<あらすじ>
1880年エジソンが発明した電球をお披露目し、世界中が沸きたつ頃、ハンガリーブダペストでは貧しい母親に双子の姉妹リリとドーラが誕生する。やがて双子は孤児となり、路上でマッチを打っていたが、それぞれ別の紳士に拾われていく。
それから20年後の1900年の大みそか、気弱な革命家となったリリと華麗な詐欺師となったドーラは、偶然にもオリエント急行に乗り合わせる。ブダペストで降りた双子は謎の男Zと出会うが、リリはZに惹かれデートするが、ドーラは一夜の遊び相手にZに近づく。は双子を同一人物と思い込んで2人に恋をしてしまう。

ポーランド出身の女優ドロタ・セグダが双子とその母の3役を演じています。

モノクロの映像が美しいですね。
これはエニェディ監督のデビュー作で、カンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞しました。18年ぶりに撮った『心と体と』では2017年ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したことは記憶に新しいのではないでしょうか。
タイトルの「私の20世紀」にはどんな意味があるのか、などもいろいろ話し合いましょう。

  日時 : 2023年8月20日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第101回 青・白・赤どの作品が好きですか?『トリコロール/赤の愛』

新長田まちなか勉強会は100回積み重ねることができました。ありがとうございます。
世界の状況に疎かった私も、いろんな映画を見、嶋田さんの解説や皆さんの感想を聞いて、宗教・世界史・経済・地政学の面から世の中の仕組みを考えることがでるようになったと思います。
私の個人的な趣味としては、映画って洋服や調度品や色合いなどを見るのが楽しいですね。食事風景、インテリア、会話のやりとりなど日本と全然違うので、興味が尽きないですね。今度そういった視点の感想会をしましょうね。「あの壁に貼ってたコラージュいいね!」とか「ブラウスの着崩し方おしゃれ〜」などと言い合いたいです。

さて次回の映画会のお知らせです。

 トリコロール/赤の愛
 【Trois Couleurs: Rouge】
 監督 : クシシュトフ・キェシロフスキ
 1994年  フランス・ポーランドスイス映画   95分

<あらすじ>
ジュネーヴに住む大学生ヴァランティーヌはモデルで、恋人とは遠距離恋愛中。
ある日ヴァランティーヌは老判事と知り合いになるが、彼は隣人の電話の盗聴を趣味としていた。

ポーランドの巨匠クシシュトフ・キエシロフスキー監督によるフランス国旗青・白・赤をモチーフにした「トリコロール」三部作の第3作目。


クシシュトフ・キエシロフスキー監督の作品は、新長田まちなか勉強会では『偶然』と『ふたりのベロニカ』を見ました。
『偶然』はポーランドの政治体制を巧みにはめ込んで、主人公の3パターンの運命を描いたいましたね。

ふたりのベロニカ』はよくわからないながら、主人公のイレーヌ・ジャコブと映像の美しさに魅了されました。

今回の「赤の愛」もイレーヌ・ジャコブが主演です。
感想会でみなさんと語り合うのが楽しみです。赤が好きですか。青・白どれが好きですか?  

   日時 : 2023年7月30日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第100回 『白バラの祈り:ゾフィー・ショル最期の日々』で信念の意味を考えてみる

新長田まちなか勉強会が100回目を迎えます。
第1回は2015年4月26日ですから、あれから8年2か月経ったのですかぁ。感慨深いですね。
劇団どろの芝居小屋の家賃が大幅に値上げされたため、それを少しでも補おうと始まりましたが、新しいメンバーも増え、とても楽しい会になっています。

毎回参加していて感じるのは、参加者のいろんな指摘で作品の内容が重層的になるということです。
特に内容がよくわからない作品は、ちょっとずつ意見を出し合って謎が解けたりします。
登場人物の心中も、参加者それぞれが違う見方をしているので、そこが面白いですね。
みなさんの感性や知識に感心させられます。インターネットのトンチンカンな口コミ映画評とは一線を画しています。

さて、記念すべき100回目は

 白バラの祈りゾフィー・ショル最期の日々
 【Sophie Scholl – Die letzten Tage】
 監督:マルク・ローテムント
 2005年 ドイツ映画 120分

<あらすじ>
1943年、ヒトラー打倒を叫び市民に自由を呼びかけたグループ「白バラ」のゾフィーは、兄とともに大学構内に反戦ビラを撒き逮捕される。
厳しい尋問にも屈せず、自分の考えを堂々と述べ信念を貫く21歳、最期の5日間を描く。

この作品は近年発見された尋問の記録を元に作られたそうです。映画で尋問官とゾフィーが喋っている会話は実際に交わされた言葉なのですね。そう思うと彼女の信念は素晴らしい。尋問官も別の意味で信念を持っているので、かなり巧みにナチスの論理を展開しています。
ちょうど同年齢22歳で処刑されたイルマ・グレーゼのことも引き合いにしましょう。看護婦になりたかったためにヒトラー・ユーゲントの幹部を希望しますが、幹部の指示で親衛隊へ、さらにアウシュヴィッツ収容所の看守になります。

信念、自分の考えとは・・・
ナチスは悪いだけの感想にとどまらず、みなさんのいろんな意見をお聞きしたいです。
100回記念が楽しい論議になりそうです。
ぜひお越しください。

  日時 : 2023年6月25日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第99回 女性観により運命を翻弄される女たち『ナンネル・モーツァルト : 哀しみの旅路』

次回の映画会のお知らせです。
譜めくりの女』で始まった「女シリーズ」では、多くを語らないフランス映画の醍醐味で感想がとても盛り上がりました。
映像化されていない部分でどんな出来事があったのか、観る人に想像を委ねるフランス映画らしい作品でした。
なぜこんな展開に?と思ったところの理由が全て短いシーンできちんと描かれていて、感想会で少しずつみんなで披露しあえたのが楽しかったです。

次回は「女シリーズ」第2回目

 ナンネル・モーツァルト : 哀しみの旅路
 【Nannerl, la sœur de Mozart】
 監督 : ルネ・フェレ
 2010年 フランス映画 120分

<あらすじ>
18世紀中頃、神童ヴォルフガング・アマデウスモーツァルトには4歳年上の姉がいた。マリア・アンナ・モーツァルト、通称ナンネル・モーツァルトは弟と同様に音楽の才能に恵まれていたが、女という理由で弟の陰に追いやれれていく。その秘められた音楽への情熱と儚い恋の物語。

ナンネルは父からの音楽教育を受けながらも女だからという理由で作曲を禁じられ、ヴァイオリンも小さい時は弾いていたのに、男のもだからと取り上げられます。
字も書かせてもらえません。
そして才能を発揮した弟アマデウスの伴奏役となり、ヨーロッパ各地を演奏して周ります。
その4年の間に少女から大人の女性へと成長します。
映画ではフランス王の娘と友情を育みますが、彼女も当時の女性観により過酷な人生を歩んでいきます。
映像がとても美しく、実際にヴェルサイユ宮殿で撮影されているシーンもあります。
音楽ももちろん素晴らしい。
映像や人権や人間関係や歴史などいろんな楽しみ方ができそうですね。
ぜひお越しください。

  日時 : 2023年5月21日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第98回 愛と憎しみが交錯するとき『譜めくりの女』

次回の映画会のお知らせです。
新しいシリーズが始まります。
題して「歴史を作った女たち」シリーズ。
と言っても歴史上の有名な女性が題材ではありません。
普通の女性のある日常を切り取って、その生き方などをいろいろ語り合いましょうというシリーズです。

第1回目は、前回の「音楽も共に楽しむシリーズ」繋がりで・・・
ピアニストの話です。
正確にはピアニストになれなくて、譜めくりになった人の話です。

 譜めくりの女
 【La Tourneuse de pages】
 監督 : ドゥニ・デルクール
 2006年 フランス映画 85分

<あらすじ>
少女メラニー音楽学校の入学試験の日、審査員のひとり人気ピアニストのアリアーヌの無神経な態度に動揺し夢を絶たれてしまう。
それから十数年。成長したメラニーはアリアーヌに近づき、彼女の譜めくり役に採用される。次第にメラニーはアリアーヌに惹きつけられ、彼女なくてはならない存在になっていく。

ドゥニ・デルクール監督は一流のヴィオラ奏者で、国立音楽院教授でもあるそうです。劇中の音楽も十分楽しめますよ。

みなさんの感想が楽しみです。女の逆恨みは恐ろしいなんて単純な感想にならないのが、この新長田まちなか勉強会のすごいところです。前回の『オーケストラ・リハーサル』でも、「楽団員は芸術家なのかそれとも労働者なのか」とか「指揮者の役割とは」という鋭い視点が加えられ、かなり活発な感想交換ができました。阪神大震災になぞられた意見もありましたね。
次回もみなさんのおもしろい意見がうかがえそうで、大変楽しみです。
ぜひご参加ください。

  日時 : 2023年4月30日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

 

第97回 クラシック音楽好きのニーノ・ロータのためにフェリーニが作った『オーケストラ・リハーサル』

「音楽もともに楽しむシリーズ第2弾」がいよいよ最終回となりました。
前回の『善き人のためのソナタ』では、ヴィースラーの心の変化が一体いつ起こったのかについていろいろな意見が出ました。ブレヒトの本を読みたいと思って部屋に忍び込んだ時、ピアノソナタをを聴いた時、最初から「善い」人だったがシュタージの訓練でその心が封印されていたなど、みなさんよく観察していますね。心変わりする前と後ではヴィースラーの顔つきが変わったという意見もありました。

 嶋田さんの解説で、なぜ東ドイツでシュタージが作られたのかという説明があったので、シュタージの極悪非道さを描く映画ではないということが認識でき、この作品の真意を深く鑑賞することができました。

次回は

 オーケストラ・リハーサル
 【PROVA D'ORCHESTRA】
 監督: フェデリコ・フェリーニ
 1979年  イタリア/西ドイツ映画 72分

<あらすじ>
礼拝堂で行われるオーケストラのリハーサルを、TV取材班がインタヴューを交えながらドキュメンタリー風に撮る(インタヴューアーはフェリーニ監督の声)というシチュエーション。
ドイツ人指揮者と団員は対立し、団員も勝手な主張や行動に出て、ついに・・・。

 フェリーニ監督がTV用に撮った映画です。音楽は長年のコンビであるニーノ・ロータニーノ・ロータはこの映画を最後に亡くなりましたのでこれが最後のコンビ作品となりました。
 フェリーニ監督のジェルソミーナやカビリアたちの話も好きですが、この作品の混沌とした人間模様と人を食ったようなオチもフェリーニ監督らしいですね。
 短い映画ですので、音楽が美しい数分アニメも同時上映いたします。どうぞお楽しみに。

会場は消毒、換気に気を付けています。3月ですがまだまだ寒いと思いますので、防寒対策をしてきてくださいね。

  日時 : 2023年3月19日(日) 15:00 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場 :劇団どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)