毎日蒸し暑いですね。8月の新長田まちなか勉強会のご案内です。
白夜の時を超えて
【Fire Eater : Tulennielija】
監督 : ピルヨ・ホンカサロ
1998年 フィンランド映画 100分
北欧シリーズ第4弾は、再びフィンランド映画を選びました。
ピルヨ・ホンカサロ監督はずっとドキュメンタリー映画を撮っていた女性監督です。
双子の姉妹の話ですが、それと同時に母と娘の話でもあります。
ある晩中年になったヘレナは、酒場で父親の酒代を稼ぐために歌を歌わされている少女と出会います。
少女がヘレナに付きまとうので、仕方なく昔住んでいた古いアパートに連れて行くのですが、その子を見ているうちに自分の幼かった時のことを思い出します。
第二次世界大戦末期、その家では生まれたばかりの双子ヘレナとイレネを置いて、母親はドイツ兵と出て行ってしまいます。
双子はおばあちゃんに育てられますが、コミュニストだったおばあちゃんはヘレネとイレネをレーニンの名前を採って「ウラディミール」と「イリイチ」と呼び可愛がりました。ところがある日のことおばあちゃんはサウナで滑って急死してしまいます。
そして二人は施設に入れられ、二人だけの世界に閉じこもり、お互いだけを必要として支え合いました。
さてある秋の日、突然二人を捨てた母親がサーカス団を営む男とともに施設を訪れ、体の柔らかいイレネを気に入ります。男はイレネだけを連れて行きたかったのですが、ヘレナも一緒に引き取ります。
イレネは空中ブランコに抜擢させ、ヘレナは雑用係となりました。母親はヘレナをこう慰めます。「この世には才能ある人間とその人間に仕える人間がいる。自分も仕える方だ」と。けれども空中ブランコの過酷な練習はイレネの精神を蝕み、二人の心はだんだんと離れて行きます。
確かに双子はいつまでも同じ人生が続くと思うものです。一卵性ならDNAは全く同じなので特にそう感じるかもしれません。けれどもいつの日か違った道を歩まなければならなくなる日が来るし、そのことで全く違う人生になり、全く違う性格になっていくのです。いつまでも一緒と思っていたはずが、別離が来ることがあると分かった時のショック。自分を受け入れられないままにお互いの差を見せつけられて時のショックはなおさらです。
それと同時にこの映画では母親と娘の葛藤も描いています。母であり女であること、愛情や重荷そして許容などを様々なエピソードの中に織り込んでいます。冒頭の壁画は男の子の姿に変えたキリストを背負って川を渡ったと言われる聖クリストフォロス像です。川を渡っているうちにだんだんとキリストが元の姿にもどって重くなったが、頑張って川を渡りきったので、キリストを背負った者という名前をもらいました。この像から西洋の人は重荷を背負うことを連想します。私たちは何のことかわかりませんが、わからなくてもこの映画では、十分にそれを表しています。(けれどもいつも思いますが、西洋の映画を見るときに、ちょっとした小物や背景に隠されたイメージを読み解くことが出来なので、歯がゆいですね)
現在をモノクロで過去を色鮮やかなカラーで表現していますが、現在のヘレナは過去に向き合うことでやっと自分を受け入れることができたのかもしれませんね。
いろんな角度から考えさせられる素晴らしい映画だと思います。
お盆の最終週に当たりますが、お時間を作ってぜひお越しください。
日時 : 2019年 8月18日(日) 15:00〜 事前申し込の必要はありません
場所 : 劇団どろアトリエ
(新長田アスタくにづか5番館2階奥)
地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
新長田駅から大正筋を南へ10分
参加費 : 500円(会場使用料として)