次回の作品のお知らせです。
2003年に始まったアメリカ軍のイラク侵攻を背景に、イラク北部のクルド人の悲痛な状況を、子どもたちの目を通して描いた秀作です。
当日は、イラン・イラク戦争から湾岸戦争を経て、クルド人がどんな状況になってしまったかを、嶋田邦雄氏に解説していただいて、さらに物語の背景を知り、作品を深く味わいたいと思います。
亀も空を飛ぶ
Kûsiyan jî dikarin bifirin
監督:バフマン・ゴバディ
2004年 イラク・イラン・フランス映画 97分
あらすじ
舞台は2003年春、イラク北部のクルド人居留地。
イラン・イラク戦争とそれに続く湾岸戦争で荒廃した中、戦争孤児たちを取りまとめる少年サテライトはアンテナを設置したり、地雷を掘り出して売ったりして、その日の暮らしを立てていました。
そこに赤ん坊をおんぶした少女アグリンと兄で両腕を失ったヘンゴウがやってきます。彼らはハラジャからやって来たらしいのですが、そこはイラク軍の化学兵器により5000人の市民が虐殺されたことで有名なクルド人の村なのです。アグリンは心を閉ざしニコリともしません。ヘンゴウは器用に口で地雷除去をやってのけます。赤ん坊は化学兵器のせいなのか盲目です。
さて、大人たちは衛星放送でアメリカ軍の動向を知ろうとしています。サテライトはアメリカびいきで少し英語ができ、アメリカ軍が自分たちを解放してくれると信じていますが、私たちはすでにこの後イラクにどんなことが起こったか知っていますね。
でもこの映画はアメリカ軍がやってきたところで終わります。
この映画はヘンゴウに予知能力を持たせたマジック・リアリズムの手法で、映画を見るものを強く魅了します。
バフマン・ゴバディ監督はいつも優しい目で子どもを撮っていますが、ここに出演する子どもたちは全員本物の戦争孤児です。出演する子どもを選ぶのに難航し、主人公のサテライトは撮影が始まってから決まったそうです。監督はこう言っています。「私は単に手足のない子どもたちを探していたのではありません。ものの5分でそういった子に多く出会います」
アメリカが理由をつけて他国を攻撃するのをニュースで見るにつけ、腹立たしくて泣きたくなります。傷つくのはいつも一番弱い人で、この映画でも少数民族の親を亡くした子どもたちが体と心に傷を受け、ずっとそれを背負って生きてく様子が描かれています。
監督はイラク戦争終結後にイラクを訪れ、住民が直面している悲惨な状況を目にし、とりわけ障害者になった子どもたちに衝撃を受けて、戦争に異議を唱える映画を作りたくなったそうです。
ぜひ一緒に見て感想を語りましょう。
日時 : 2019年 2月17日(日)15:00〜 事前申し込の必要はありません
場所 : 劇団どろアトリエ
(新長田アスタくにづか5番館2階奥)
地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
新長田駅から大正筋を南へ10分
参加費 : 500円(会場使用料として)