新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第12回 フリッツ・ラングの『M』はすべてを先取り

次回の映画会は、12月13日(日)に開催します。

『M』

 原題: 『M – Eine Stadt sucht einen Mörder』

  監督: フリッツ・ラング

  脚本: フリッツ・ラング、テア・フォン・ハルボウ

  1931年 ドイツ映画 117分


 この作品は、ドイツ初のトーキー映画『嘆きの天使』の次の年に作られたにもかかわらず、今の映画に通じるいろいろな趣向を凝らしています。
 その上ストーリーもおもしろく、なおかつ結末は今日でもその社会問題を解決するに至っていない命題を突き付け、一粒で2度も3度も4度もおいしいという映画です。

あらすじ紹介
 町では幼い少女ばかりを狙った連続殺人事件が発生しています。
 ある日女の子がまたさらわれ、殺されて発見されました。警察は犯人逮捕のため、町中のがさ入れを始めます。
 それでは商売上がったりと、コソ泥たちは自分達の手で犯人を捕まえることを思い立ちますが、盲人の風船売りは、あの犯行のあった日と同じ口笛を耳にします・・・。
 
 映画のBGMの代わりに、犯人の吹く口笛『ペール・ギュント』のメロディが効果的に使われています。また犯行シーンを映さず影を使った演出。警察と泥棒たちのせりふで引き継ぐシーン。カットで繋ぐ場面展開。チョークで背中につける「M」マークなど、どれをとっても画期的なものばかりです。
 
 後半の集団裁判では、みなさんの意見はどうですか? ぜひお越しください。
 
 日時 : 2015年12月13日(日) 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
            地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
            新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として) 

 話題提起 : 嶋田邦雄氏 (ブレヒトくらぶ)

 

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第11回 ドイツ初のトーキー『嘆きの天使』を読み解く

11月28日(土)映画会開催のお知らせです。

 前回の『カリガリ博士』では、舞台美術のおもしろさを堪能できました。英語バージョンでしたので、音楽はピアノ伴奏でしたが、ドイツ語バージョンでは現代音楽だそうです。ドイツ表現主義が倍増することでしょう。

さて、次回は『嘆きの天使

  原題: 『Der blaue Engel』

  監督: ジョセフ・フォン・スタンバーグ

  主演: エミール・ヤニングスマレーネ・ディートリッヒ

  1930年ドイツ映画 90分

 ドイツ初のトーキーを作るため、すでにハリウッドでトーキーを撮っていたスタンバーグ監督が招かれました。原作はノーベル賞作家トーマス・マンの兄ハインリヒ・マンの小説『ウンラート教授』です。

 厳格で横暴なため生徒に嫌われている高校教師が、生徒から取り上げた踊り子のプロマイドを見て、キャバレーに出かけていきます。ところが踊り子ローラの魅力にすっかりはまり、毎晩通いつめた挙げ句に彼女に結婚を申込んだところ、これが運の尽き。道化師となって一座と共にどさ回り。そしてついには・・・

 原作ではドイツの権威主義が皮肉られました。ところがそれを映像化するには検閲が通らない。そこでしかたなく、魅力的な女性の虜になってしまった男の悲劇ということにしてしまいました。だからうんと魅力的な女優に踊り子を演じてもらわなければならなかったのです。そこでマレーネ・ディートリッヒが抜擢されたんでしょうね。
 前回の『カリガリ博士』でも、オチが付け足されていました。これももちろん同じ理由です。原作のままでは脚本が検閲を通らなかったのですね。同年公開の『西部戦線異状なし』の上映も中断させられました。ドイツは映画の検閲を強化し、どんどんナチスが躍進していきます。そのようなことも併せ考えながらこの映画を見ると、もっと面白くなると思います。

 日時 : 2015年11月28日(土) 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
         地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
         新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として)

 話題提起 : 嶋田邦雄氏(ブレヒトくらぶ)

 

第10回 『カリガリ博士』 ~新シリーズ「映画の暗黒と栄光を見つめて」が始まりました 

10月25日(日)映画会開催のお知らせです。

 「映画を見て知る〇〇」シリーズが終了し、次回から「映画の暗黒と栄光を見つめて」と題して、映画という新しい大衆メディアが現代社会にどのように関わってきたかを掘り下げてみたいと思います。資本主義的生産の巨大化、排外主義とファシズム、戦争、プロパガンダ・・・。また今まで不可能だったことが可能となったことで、映画の光の面・影の面も話し合えたらと思います。

 まずは

 カリガリ博士

  原題: 『Das Kabinett des Doktor Caligari』

  監督:ローベルト・ヴィーネ

  1920年ドイツ映画 80分
 

 フランシスと親友アランは移動遊園地のようなお祭りに出かけて、ひとつの見世物小屋に入ってみます。そこではカリガリ博士が“眠り男”チェザーレを使って観客の未来を予言するという出し物をやっていました。アランはそこで自分の寿命が明日までだと予言されてしまい、本当に次の日死体となって発見されます。
 警察やフランシスはカリガリ博士が怪しいと捜査を始めるのですが、・・・

 サイレント期のドイツ映画を代表する作品。この当時ヨーロッパでは第一次世界大戦の惨劇から、今までの価値観を否定する新しい思想がたくさん生まれました。芸術の世界においてはドイツで今までの印象派(Impressionism) に対して表現主義(Expressionism) という運動が始まったのです。-英語にすると反対語だってことがよく分かりますねー 

 その表現主義の画家たちによって、映画のセットが作られました。手書きのセットはすべて紙で作られています。垂直の線がまったくなく、歪んだ非現実的な舞台が第一次世界大戦後の社会の不安や人間の心の闇をうまく表現しています。白黒サイレント映画にもかかわらず、今なお斬新でおもしろいですね。映画を見ながらたっぷりとその世界を楽しんでください。

 前日に「駒ヶ林のけんか祭り-左義長祭」講演会もありますので、連日になりますが、併せておこしください。

 

shinnagatamachinaka.hatenablog.com

 

 日時 : 2015年10月25日(日) 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
         地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
         新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として)

 話題提起 : 嶋田邦雄氏(ブレヒトくらぶ)

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駒ヶ林のけんか祭り-左義長祭の古記録

10月24日(土)に行われる講演会、駒林神社の左義長祭は、江戸時代に書かれた『摂陽落穂集 / 浜松歌国 [著]』 巻三にも著されています。  

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「同郡駒ヶ林村にあり西の処、中の処、東の処三つに分って、正月十五日朝これをつとむ。
 世の常の左義長とは事変わり材木にてわくを組み、上に大竹を立て、さまざまこれにかざりものをなし、
 三ヶ所の数人是を荷ひ、神輿の如く持ち廻る。扨真柱に横に結び付し材木あり、是を角といふ。
 数人東西にわかれて此の角を乗せ合うなり。
 勝たる方はいさみ立ち、手を打て悦び躍る也。
 負たる方は右の左義長を捨て逃げかへる。
 これを旧例とす。勝たる方は其の年の漁をするに一番とす。依って其の悦び祭る事也。
 
 こんな古い記録に載っているなんて、ワクワクしますね。
 活字では『續燕石十種 / 国書刊行会編輯』第5巻に収録されています。

 

shinnagatamachinaka.hatenablog.com

 

当日、駒林神社神主の中山禰宜さまに詳しくして頂きます。
ぜひご参加ください。
 
 
  日時:2015年10月24日(土) 14:00~
  講師:駒林神社禰宜 中山直紀先生
  場所:どろアトリエ
   〒653-0042 神戸市長田区二葉町 5丁目1-1 アスタくにづか5番館 203
  入場料:500円
  申込:新長田まちなか勉強会shinnagatamachinaka@yahoo.co.jp または往復はがき
  定員:先着50名

「駒ヶ林のけんか祭り-左義長祭」講演会のお知らせ

駒ヶ林のけんか祭り-左義長祭」講演会を開催します。

駒林神社の神主さん、中山直紀禰宜さまをお迎えして、
駒林神社で古くから行われてきた左義長祭のおはなしをしていただきます。

 神戸市長田区にある駒林神社は古代には玄蕃寮鴻臚館の出先機関でもあり、
平清盛厳島神社詣での際は、一時上陸した記録もある古い神社です。ここの左義長は二基の「お山」をぶつけ合うという全国的にも珍しい形態で
勝った方がその年の網入れの優先権を得るところから
かなり勇壮なものだったそうです。

時には”血の雨が降った”らしいです。だから左義長なのにけんか祭りなのです。

灘のけんか祭りもそうですが、近いところでけんか祭りがあるのはなにか民俗学的に理由があるのかもしれませんね。
講演会当日は、神社所有の資料や
昭和34年最後となった年の記録映像も見せていただけます。
さらに中山禰宜さまの巧みな話術で、とても楽しいおはなしを聞かせていただけることと思います。

歴史好きの方、

郷土愛の方、

民俗学に興味のある方、

神社や祭りが好きな方、

さらに、以前実際に「お山」を担いだことがある方、

ぜひお越しください!

  記

日時:2015年10月24日(土) 14:00~
講師:駒林神社禰宜 中山直紀先生
場所:どろアトリエ
   〒653-0042 神戸市長田区二葉町 5丁目1-1 アスタくにづか5番館 203
入場料:500円
申込:新長田まちなか勉強会shinnagatamachinaka@yahoo.co.jp または往復はがき
定員:先着50名

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第8回 映画を見て知る武器商人の暗躍 『ロード・オブ・ウォー』

次回、9月22日(火・祝日)映画会開催のお知らせです。

シルバーウイークのまっただ中ですが、長期旅行に行かない方は、ぜひお越しください。映画の中で、ウクライナ、アメリカ、リビア南アフリカカリブ海といろいろな地域を見て回れます。ただし武器取引がらみですが…

 ロード・オブ・ウォー

  原題: 『Load of war』

  監督・脚本: アンドリュー・ワイズ

  出演:ニコラス・ケイジ, ジャレッド・レト,  イーサン・ホーク

  2005年アメリカ映画

 ウクライナからアメリカに移民してきた主人公ユーリ・オルロフは、弟を誘い武器商人になることを決意しました。なんたって儲かるからね。

 さっそくベルリンの兵器見本市に出かけますが、大物武器商人には軽くあしらわれてしまいます。でもアメリカ軍の残していった山積みの武器を横流して商才を開花。世界を股にかけ、紛争地に出かけて行って武器を相手に売りつけるようになります。

 一方弟のヴィタリーは、世界中に紛争の種を撒くという自己矛盾に悩み次第にコカインにおぼれていくようになります。ユーリの方は、美しい妻を得、息子も生まれ、おまけに冷戦が終わってロシアの武器がいらなくなったことに目をつけ、さっそく紛争の絶えないアフリカに向かうのですが・・・

 実際に複数の武器商人に取材して作られた事実に基づく映画。いろんなひとの統合した姿だそうです。この映画に出てきた武器は、すべて武器商人が売却する直前の本物。この映画の撮影後は世界中で売られ、本当にテロや紛争に使われていると考えただけで寒気がしてきます。

 さてユーリは一体どうなるのでしょうか。武器商人をニコラス・ケイジが、それを追い詰めるインターポール刑事をイーサン・ホークが演じます。が、資金調達はアメリカ国内ではできなかったそうです。武器の輸出で儲かっている国ですからね。

 日本もついに武器輸出ができる法案が通ってしまい、武器商人=死の商人が儲かる仕組みができてしまいました。おとうちゃんの会社が儲かってよかったわなんて言ってたらいけませんよ。

ではぜひお越しください。お待ちしております。

日時 : 2015年9月22日(火・祝日) 3:00~ 申込み不要

場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
         地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
         新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

参加費 : 500円 (会場使用料として)

話題提起 : 嶋田邦雄氏(ブレヒトくらぶ)

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第7回 映画を見て知る チリの軍事クーデターを画策したのは? 『ミッシング』 

次回、8月23日(日)映画会開催のお知らせです。

  意図したわけではありませんが、社会の動きには、我々の知らないところでいろんな画策がなされていたんだなぁ、と思える映画を選ぶと、

アメリカのCIAがらみが続いてしまいました。

 次の映画は、

『ミッシング』

  原題: 『Missing.』

  監督:  コスタ=ガウラス

       1982年アメリカ映画

 1973年9月11日、チリで発生したクーデターは、自由選挙により合法的に生まれたアジェンデ社会主義政権を、軍部が武力で覆したということで有名ですが、2001年のアメリカ同時多発テロ事件が起きるまでは、9・11と言えばこのクーデターのことでした。

その後チリはクーデターを起こしたピノチェト政権の独裁政治により、思想統制強制収容所送り、拷問など長い間人々を苦しめることになりました。

  さて、この映画はこのクーデーターが起こった時にチリにいた若いアメリカ人夫婦の話です。

ある日夫が行方不明になってしまいました。妻は夫の両親に相談するのですが、もともと嫁のことが気に入らなかった両親は、あなたが至らなかったから息子が出て行ったのだと取り合ってくれません。

アメリカの領事館の捜索も進まず、チリにやってきた父親と嫁は反目しながらも独自に捜査を始めると、なんとあまりにも大きな力が二人の捜査を阻んでいることがわかるのですが、その後ろにはもっととんでもないことが絡んでいることを知って愕然とします。

  この話は、実際に息子が殺されたという人の手記をもとに映画が作られました。

社会主義国をなくすためなら自作自演でも何でもするよ、というアメリカの姿勢にほとほとあきれ返ってしまいますが、7月の『愛の落日』8月の『ミッシング』と続けて見ると、日本でもアメリカの画策によるテロ事件が起こって、ISの仕業だからすぐに集団的自衛権を行使しようということになるのも全くゼロではないなぁなどと、とても怖い想像をしてしまいました。

  次回映画会、ぜひお越しください。

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