新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

無垢な13歳の少年が初めて知った社会の不条理『13歳の夏に僕は生まれた』

暑い毎日が続いています。暑い毎日が続いています。9月の鑑賞会ではもっと涼しくなっているといいのですが・・・次回はイタリア映画の最終回となりました。最終回にふさわしい素晴らしい作品をご紹介します。

 13歳の夏に僕は生まれた
【Quando Sei Nato Non Puoi Piu Nasconderti】
  監督 : マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
  2005年  イタリア映画 120分

最終回にはイタリアが抱えている難民問題を取り上げたいと思い、候補を3作品に絞りました。一つはエマヌエーレ・クリアレーゼ監督の「海と大陸」、二つ目はエルマンノ・オルミ監督の「楽園からの旅人」でしたが、個人の力ではどうすることもできない無力感を子どもの目を通して訴えているという点から「13歳の夏に僕は生まれた」が選ばれました。
この記事を書いている時点でも、先日リビア沖で難民船が保護され、フランスやドイツなど5カ国が受け入れ分担に合意しました。イタリアの現政権は反移民政策を掲げ難民船の入港を拒否していましたが、今日分担参加を表明したそうです。日本が難民を受け入れないのが歯がゆくて仕方ありません。何年も学校へ行けなかったり、将来に希望がない生活をしている人に対して、命や迫害の危険がないから難民ではないと認定するのは人道的ではないと思います。

さて映画のあらすじですが、
裕福な家の息子サンドロは、夏休みに父、叔父と地中海クルーズに出かけます。真夜中過ぎ、サンドロは過って海に落ちてしまいますが、幸い不法移民を乗せた船が通りかかり、ルーマニア人の少年ラドゥが海に飛び込んで、サンドロを助けてくれました。船の上ではたくさんの難民がひしめきあい、死者も出ます。お坊っちゃまのサンドロは知らない世界を見、生きるためにいろんな経験をします。やがて船は巡視船に見つけられ、難民たちは移民センターに保護されます。息子は死んだものと思いこんでいた両親は、悲しみから一転大喜びで移民センターに駆けつけますが、サンドロから命の恩人のラドゥとアリーナ兄妹を引き取って欲しいと懇願され、彼らを養子にすることにします。ところがラドゥとアリーナは家の金品を盗み家を出て行き、その後アリーナからミラノに来てほしいという電話が入ります。そこでサンドロの見たものは・・・。
裕福な家の養子にしてやると言っているのに、どうして恩を仇で返すような真似をして出て行くのか不思議な気もしますのが、ずっと搾取され続けてきた人たちは、主従関係のある生活より、自分自身の力で自由に生きていく方を選ぶのかもしれません。兄のラドゥはそう考えていても、妹のアリーナはそれがわかっていたかどうか疑問ですね。無垢のサンドロが13歳にして初めて知った社会の暗部、不条理。どうすることもできない自分に打ちのめされ、それを見ている私たちもサンドロと一緒に途方にくれます。
原題は「ひとたび生まれたら、隠れることはできない」。生きるために人はどんなことでもしないといけない。最後のシーンにこの題の意味が重くのしかかります。
ぜひ一緒に見て、おしゃべりしましょう。

  日時 : 2018年 9月30日(日)15:00〜 事前申込の必要はありません
  場所 : 劇団どろアトリエ
       (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
       地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
       新長田駅から大正筋を南へ12分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

f:id:tdhss:20180818222720j:plain