新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第37回 「ケマダの戦い」で南米の歴史、砂糖の歴史、植民地の歴史を考えよう

南米シリーズの第2弾はカリブ海に浮かぶ島が舞台です。と言ってもそれは架空の島。制作時はスペイン領だったのですが、スペインからクレームがついたので、ポルトガル領ということになりました。
そして、制作はイタリア人監督。
南米シリーズと言いつつ、前回に引き続き南米以外の国の制作です。それだけ南米問題を描くのは当事者には難しいということでしょうか。

 ケマダの戦い
  【Queimada】
  監督: ジッロ・ポンテコルヴォ
  1971年 イタリア映画 115分

あらすじ
19世紀、カリブ海に浮かぶケマダ島にイギリス人ウォーカー卿が降り立ちました。
この島は16世紀にポルトガル人がやってきて、原住民の反乱を抑えるために島の全土を焼き放ち、そこに黒人奴隷を連れてきて植民地とした所です。ウォーカー卿は、ポルトガルによる砂糖の独占を阻止するために、イギリス政府から派遣されたのでした。
彼は奴隷の中から指導者になりそうな青年ホセを見つけ、革命を起こすように説得します。
一方、ウォーカー卿は白人と黒人の混血デディーにポルトガル提督を暗殺させ、革命は見事成功したのでした。
政権を取ったものの黒人奴隷たちは政治については素人でした。仕方なく大統領の座はテディに譲ります。
しかしこれこそがもともとウォーカー卿が目論んでいたことで、イギリスは砂糖の利権をうまくポルトガルから奪うことができたのでした。ポルトガルと戦争ということになったら大変な出費になってしまうからです。
それから10年がたったある日、イギリスに戻っていたウォーカー卿のもとにケマダで黒人奴隷たちが反乱を起こしていると連絡が入ります。再びケマダに戻ったウォーカー卿はホセが率いる反乱軍の鎮圧にあたりますが…

コロンブスの2回目の航海で新大陸にサトウキビがもたらされ、大規模な砂糖のプランテーションが稼働し始めました。作業にアフリカから何万人もの奴隷が連れて来られました。当初は大変に高価だった砂糖も、19世紀になると庶民にも広がり、紅茶に砂糖を入れて飲むことで砂糖が大量に消費されるようになりました。精糖会社の株価が上がると、投資家がそこに投資し、その潤沢な資金でたくさんの奴隷が買われ、さらにプランテーションを拡大。砂糖の安定した供給の裏にはこうした西洋諸国の汚いやり口があったのです。

奴隷を働かせることでしかなりたたないプランテーションだけでも酷い話なのに、この映画ではさらに、その土地を持っている国から利権を奪うために奴隷たちを騙すようなことがいとも簡単に行われていたことに愕然とします。

映画の出来は洗練されているとは言い難いのですが、南米の歴史、砂糖の歴史、植民地の歴史を考えるのに大変いい映画だと思います。
トップスターと「ゴッド・ファーザー」のちょうど間くらいのマーロン・ブランドが出演しています。
ぜひ一緒に見て、ワイワイ話をいたしましょう。

    日時 : 2017年 11月19日(日)15:00〜 事前申し込の必要はありません
    場所 : 劇団どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ12分
    参加費 : 500円(会場使用料として)

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