新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第66回『紅いコーリャン』チャン・イーモウの色彩で莫言の土着伝説を彩る

 前回の『レベッカ』鑑賞後、みなさんの感想を聞いていてわかったのですが、主人公を追いつめる恐怖が映画では描き切れてなかったようですね。私は小説も読んでいるのでヒロインの心理がわかって見ていましたが、夫がいつまでもレベッカを愛しているという疑い、過去を隠すためにとる夫の不可解な態度、ダンヴァース夫人の圧力が、じわじわとヒロインを追い詰めているように観客に伝わっていなかったようです。やはり上下2段組472ページの小説を2時間10分にまとめるのは難しいんでしょうね。
 なぜダンヴァース夫人はあんなにレベッカ にこだわったのでしょうか、と誰かが疑問を投げかけていましたが、私は右手でフォークを持つようなアメリカ娘が、マンダレー屋敷で女主人となって君臨することにダンヴァース夫人が耐えられなかったのではないかと思います。理想の貴族の空間を汚されたくなかったのかしら? 自分も平民なのにね。ダンヴァース夫人がレズビアン説もありますよ。

次回8月のお知らせです。

 紅いコーリャン
 【紅高粱】
 監督 : 張芸謀チャン・イーモウ
 1987年 中国映画 91分

 原作は莫言の『赤い高粱』。2012年「幻覚的なリアリズムによって民話、歴史、現代を融合させた」としてノーベル文学賞を受賞しました。受賞理由の通り『赤い高梁』も土着民話をマジックリアリズ手法によって歴史として描いた作品です。

〈あらすじ〉
1930年代末の中国山東省。孫が語る祖父母の歴史。
祖母の九児が娘だった時貧しく、ロバ1頭と引き換えに親子ほど年の離れた造り酒屋の主人でハンセン病患者の元に嫁ぐことになる。嫁入りの御輿に揺られ嫁ぎ先に向かう途中、強盗に襲われるが、逞しい担ぎ手余占鰲(祖父)に救われる。
里帰り後、再び強盗に襲われるが、その正体は余占鰲で、二人はコーリャン畑で結ばれる。夫の死後、豆官(父親)が生まれ、造り酒屋を盛り立て幸せな日々が続くのだったが…。

 どぎつく、下品で、匂いや汗が飛んできそうな作品です。好き嫌いが分かれるでしょう。いつも思うのですが、小説を映像化するとグロテスクさが強調されます。そこが小説が映画に勝るところだと思っています。
 この小説も読むと素晴らしいのですが、映画はチャン・イーモウ監督の色彩のセンスが存分に発揮された作品であり、中国第五世代監督の一人の記念すべき第一作目として見る価値はあると思います。
どうぞお越しください。

  日時 : 2020年 8月9日() 15:00〜 事前の申し込みは必要ありません
  場所 : 新長田小劇場劇団 :どろアトリエ改メ
     (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ10分
  参加費 : 500円(会場使用料として)

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