新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第32回 『長江哀歌(エレジー)』大きく変化する中国とそこで地道に生きる人 

7月の映画会はもう次の日曜日に迫ってしまいました。
お知らせが遅くなり申し訳ありません。
中国シリーズの第4回目は賈 樟柯(ジャ・ジャンクー)監督です。

 長江哀歌(エレジー)
  [三峡好人]
 監督 : ジャ・ジャンクー(賈樟柯)
 2006年 中国映画

原題の「三峡好人」は三峡の善人という意味ですが、三峡は中国の長江本流にある三つの峡谷のことで、漢詩水墨画に出てくるあの美しい峡谷です。
ブレヒトくらぶの方ならこの題名を聞いてすぐに「セチュアンの善人」を思いつくでしょう。セチュアンは四川のドイツ語(英語)読みですね。
この三峡に世界最大の水力発電ダムが建設されました。町がダムの底に沈むということで110万人が強制退去、名所旧跡も水没してしまったそうです。

映画は16年前に別れた妻子に会うために、男が船で三峡にやって来るところから始まります。
妻の住所はすでにダムの底に沈んでおり、町の解体作業をしながら妻の居所を探すことにしました。住民が移動したあとの建物の解体です。

おなじころ、別の女は2年間家に帰ってこない夫を探しに、やはり三峡にやってきます。ところが夫はすでに別の会社に移っており、住民を強制退去させる仕事をして儲けているようです。また浮気もしているようです。

この二人に係わる現地の人々と発展する中国とを見事に対比させ、時代の波に翻弄されながらも地道に生きる人たちを暖かく見つめる監督の気持ちが伝わってきます。

ジャ・ジャンクー監督は初め、記録映画としてこの地域を撮っていたそうです。ところが映画にも出てくる「サンミンに10元を渡す男」を撮影した時、ドキュメンタリーの限界を悟ったそうです。よそ者には当地であのような巨大な変動を本当に経験している人の理解に達することはできない。ではむしろよそ者の視線で描こうではないかと。
また、公開日を商業「大作」チャン・イーモウ(張芸謀)の『王妃の紋章』にわざとぶつけたそうです。
このような裏話も踏まえて、一緒に鑑賞しましょう。
お待ちしています。

 日時 : 2017年 7月9日(日)15:00〜 申し込み不要 
 場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅すぐ
      新長田駅から大正筋を南へ12分
 参加費 : 500円(会場使用料として)

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