新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第27回 『去年マリエンバートで』 Xの記憶、Aの記憶、嘘、事実、真実

次回のビデオ上映会のお知らせです
去年マリエンバートで

【L'Année dernière à Marienbad】
 監督 : アラン・レネ
 脚本 : アラン・ロブ=グリエ
 フランス・イタリア合作映画 1961年 94分

男が豪華装飾の建物に入っていくところから映画は始まります。不気味なオルガンの音色に乗せて延々繰り返されるモノローグ。
どうやら金持ちが集まっているホテルだと気づくのですが、人々は表情がなかったり静止状態だったり、庭園の木に影がなかったり、現実の世界とは思えません。

男は言います。「私達は会ったことがあります。去年、フレデリクスバートで。でなかったら、カルルスタットか、マリエンバートで。あるいはここで」
タイトルの「マリエンバートで」が「フレデリクスバートで」となっていないところからして、曖昧で事実かどうかわからないということを伝えてる気がします。

男は、あなたはこうでした、あの時あなたはこう言いましたと、女に言いつづけるのですが、女は「いいえ。そんなことはありません」と否定します。男が何度も言ううちに、女の記憶は変わり、ついに二人は・・・

それぞれの記憶では、衣装も違っているし、風景も違っています。同じ彫刻なのに、置かれている場所や角度が違っています。
いったい誰の記憶が正しくて、誰が嘘をついているのか。それともそんな事実は最初からなかったのか。

これは、意味を考えて見るよりも、映画の世界にどっぷりと入り込み、それぞれの人物の記憶に身を任せると、とても面白い映画だと思いますよ。

映画の後で、あそこはあーだ、こーだと語り合いましょう。

日時 : 2017年 2月12日(日)15:00〜 申し込み不要 
 場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
      新長田駅から大正筋を六間道商店街まで南へ10分
 参加費 : 500円(会場使用料として)

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第26回 演じても演じても返しきれない恩『ピエロの赤い鼻』

次回のビデオ上映会のお知らせです
新年最初の演目は

ピエロの赤い鼻
【EFFROYABLES JARDINS】
 監督 : ジャン・ベッケル
  フランス映画 2003年 95分

 恋のさや当てから、軽い気持ちでやらかした似非レジスタンス活動がとんだ悲劇を招いてしまいました。
 映画は、父親が赤い鼻をつけピエロに扮してみんなの笑いの的になるのを息子が不満に思っているところから始まります。そんな息子に父の親友のアンドレが理由を語り始めます。
 ナチス占領下のフランス、ジャックとアンドレは女の子にいいところを見せようと軽いノリで、ドイツ軍が輸送に使う鉄道のポイントを爆破します。ところがポイントの切替所には宿直のおじいさんがいて大怪我をさせてしまうのですが、そんなことは知る由もく、ジャックたちは祝杯をあげていると、まもなくドイツ軍がやってきて二人は捕らえられしまいました。
 ドイツ軍は言います。爆破犯が自首するまで村人4人を人質にすると。他に二人の男も捕まって4人は大きな穴に突き落とされてしまいます。次の日までに名乗り出る人がいないと殺されてしまうという恐怖にあせっていると、穴の上から一人のドイツ兵が姿を現わし、ピエロの芸当を始めます。最初は訝しがっていましたが、ピエロが笑わせてくれることで緊張がほぐれ、次第に赤鼻のドイツ兵と心が通じ合ってきます。  心が通じ合った結果、ドイツ兵は死んでしまいます。そして大怪我をしたおじいさんもある決意をします。
 みんなの不幸を背負って、今の幸せを噛み締めるジャックができる恩返しは・・・。
 
 ジャックの息子は父親を理解できるでしょうか。一緒に見ましょう。どうぞお越しください。


 日時 : 2017日(月・祝日15:00〜 申し込み不要 
 場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
      新長田駅から大正筋を六間道商店街まで南へ10分
 参加費 : 500円(会場使用料として)

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第25回 元日銀職員による今さら聞けない経済と金融のおはなし :生活の基本である経済と金融の仕組みがわかれば世の中の課題が見えてくる

12月の新長田まちなか勉強会は経済の講演会とビデオ上映会の2本立てです。
料金は通しで500円。安い!
講演会にご参加頂いた方は、ビデオ上映を引き続きご覧いただけます。

 日時 : 2016年124日(日)13:30 申し込み不要 
 場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
      新長田駅から大正筋を六間道商店街まで南へ10分
 参加費 : 500円 


日本銀行職員の東屋 弘(あずまや ひろし)氏をお迎えして、
私たちの暮らしと密接に関わる経済と金融の話をしていただきます。

私たちが普段なんとなく話題にしている「景気がいい悪い」「物価が高い安い」「投資って?」など、この際しっかり学びましょう。
さらに、経済格差、ブラック企業、ゼロ金利など、現在日本で起こっている様々な問題や、日米安保条約を含めた世界の情勢のことを、元日銀職員だから知り得た裏の裏のエピソードを交えて教えていただきます。どの問題も経済のことを抜きにしては語れません。

そうすることにより、世の中の課題が浮き彫りになり、私たちが次に何を行動に移せばいいかが見えてきます。
是非お越しください。

問い合わせ     : 090-1139-1945 (中島)

         shinnagatamachinaka@yahoo.co.jp

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第24回 『主婦マリーがしたこと』フェミニズムの切り口から見てみてもいいかも

次のビデオ上映会のお知らせです。

主婦マリーがしたこと
【Une affaire de femmes】
監督 : クロード・シャブロル
1988年 フランス映画 108分

題名にぎょっとしますね。さて、マリーは何をしたのでしょう。
それは堕胎を手伝ったのです。
舞台は第2次世界大戦中のフランス。ほとんどの男たちは戦地に赴いており、今妊娠したということは、夫の子どもではないということ。そんな当時のある日、アパートの隣に住む主婦が妊娠して困っているところに出くわしたマリーは、ひょんなことから堕胎を手伝ってあげました。そしてお礼に蓄音機をもらいます。
蓄音機で音楽を聴きながら、つかの間、戦中の苦しさを紛らわしていたところ、うわさを聞きつけた女たちが堕胎手術を求めてやってきます。これによりマリーは少し金持ちになることができました。
さらに、知り合った娼婦に空いている部屋を売春宿として使わせてあげたところ喜ばれ、これまた商売として手広く営んでまいります。けっこうな贅沢三昧の暮らしができるようになりました。
そんなところへ、戦地から負傷した夫が帰ってきます。でもマリーはもう夫に愛は残っていませんでした。
愛人を作って贅沢な暮らしをし、自分を邪険にするマリーに腹を立てた夫は、なんと・・・。

無免許の堕胎手術はもちろん法律違反です。
でも困っている女性を助け、自立して自分の商才で金持ちになるなんぞ、すばらしいことだと思います。でもナチスの顔色を伺い、閉塞感のあるフランスはマリーに過酷な最期を与えました。時代とカトリックが絡み合って、不幸な結末を招いたのだと思います。
男だったら法律違反して成金になっても、当たり前すぎて映画にはならないでしょう。
そして、まだこの時代こんな刑があったんだなぁと、フランスという国にびっくりします。

ぜひご覧ください。
いつもと時間が変わっています。ご注意くださいね。

日時 : 2016年124日(日)4:00 申し込み不要 
場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
      新長田駅から大正筋を六間道商店街まで南へ10分
参加費 : 500円 (会場使用料として)

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第23回 『死刑台のエレベータ』 〜映像と音楽のスタイリッシュな融合を楽しむ

さて次回の映画は
『死刑台のエレベータ』
  Ascenseur pour l'échafaud
 監督 ルイ・マル
 出演 ジャンヌ・モロー
 音楽 マイルス・デイビス
 制作 1958年 フランス映画  91分

 ルイ・マル監督は1956年に海洋学者のクストー隊長と海底のドキュメンタリー映画を撮っていましたが、この『死刑台のエレベータ』を自主制作で監督し、本格的なデビューを果たしました。
 ルイ・マルといえば、『地下鉄のザジ』『ルシアンの青春』『さよなら子供たち』など、新長田まちなか勉強会で取り上げたい作品がたくさんあったのですが、ジャズの即興を斬新な映像に被せるという演出をデビュー作でやってのけたということで、今回はそれを鑑賞したいと思います。

 いきなり電話で愛を語り合うシーンで始まります。主人公のジュリアンは社長夫人と不倫関係にあって、二人で示し合わせて社長を殺す計画を立てるのですが、犯行後現場にロープを忘れてきてしまいました。そこで取りに戻るのですが、なんとエレベータに閉じ込められてしまいます。  一方、街のゴロツキ男は、ジュリアンに憧れる花売り娘と共に、外に止めてあったジュリアンの車を盗んで、殺人事件を犯しますが、車のせいでジュリアンが疑われてしまいます。
 二組の若いカップルの行動に被せられる音楽は、マイルス・デイビスのトランペット。
 マイルスがフランスに演奏でやって来た時、ルイ・マルが頼み込んで音楽を引き受けてもらったそうです。

どうぞみなさん、お越しください。

 

 日時 : 2016年11月13日(日)3:00〜 申し込み不要

 場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
      新長田駅から大正筋を六間道商店街まで南へ10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として)

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第22回 新シリーズ「フランス映画でみる映画のルーツへの旅」 〜『大いなる幻影』

ソヴィエトシリーズが終わり、フランス映画シリーズが始まります。

フランスは1895年にルミエール兄弟によって初めて映画が上映された国です。
フランス映画が、商業主義的・戦争鼓舞の手段として作られてきたハリウッド映画とは一線を画している点に注目して、半年間フランス映画を見てみようという企画です。

シリーズ命名にあたって、上映の前後にレクチャーをしてくださる嶋田邦雄さんが次のことを書いていらっしゃいます。
「映画はその根源に資本主義的な生産工程、様式と切っても切れない関係があります。その生い立ちを逆手にとって世界の、人間の矛盾や可能性、希望や絶望を映像化する映画製作は演劇と対峙する素晴らしい芸術表現形態だと思います。そのことを再確認する思いも込めて‟映画のルーツへの旅”とのタイトルを考えてみた次第です。」

というわけで、その巻頭を飾るのは
大いなる幻影

 【La Grande Illusion】
監督 ジャン・ルノワール
1937年 フランス映画 114分

第1次世界大戦のお話です。
二人のフランス兵が乗った飛行機が撃墜され、ドイツ軍の捕虜となりました。一人は貴族のボアルディー大尉。もう一人は機械工のマレシャル(ジャン・ギャバン)。ドイツの収容所では、貴族出身のラウフェンシュタイン(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)が二人をていねいに扱います。ボアルディーとラウフェンシュタインは同じ貴族出身ということで、敵味方を超えた友情を感じます。さらにロザンタァルという金持ちのユダヤ人も加わって、収容所は様々な身分、国籍の人間が集まります。
ある日彼らはスイス国境近くの収容所に移送されますが、そこに新しくやってきた所長はラウフェンシュタイン。彼はボアルディーに再会できたのを非常に喜びます。一方マレシャルとロザンタァルは脱走計画をたててますが・・・・

身分、民族、貧富、敵味方を超えた友情。
生まれた国が違うという理由だけで殺し、国境を超えたからといって撃たない戦争の矛盾。
いろいろ深く考えさせられつつ、美しい物語です。
ぜひ会場にお越しください。

日時 : 2016年10月16日(日)3:00〜 申し込み不要

 場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
      新長田駅から大正筋を六間道商店街まで南へ10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として)

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第21回 シリーズ最終を飾る『エルミタージュ幻想』〜最後の15分だけでも見る価値あり

シリーズ「秀作の巨大な鉱脈 ソビエト映画とその遺産」で半年間ソビエト・ロシア映画を鑑賞してきましたが、
とうとうシリーズ最終作となりました。

そして最終作にふさわしい作品をご紹介します。
エルミタージュ幻想
【Russian Ark / Русский ковчег】

監督 : アレクサンドル・ソクーロフ
2002年 ロシア映画 99分

 世界遺産でもあるロシアのサンクトペテルブルクにある美術館に、美術品が展示されたままの状態でカメラを持ち込み、ロシアロマノフ王朝の300年の歴史絵巻が繰り広げられます。

案内役は19世紀のフランス外交官という設定。彼が部屋部屋を巡りながら、ピョートル大帝、エカテリーナ2世、ニコライ1世2世などの歴史的な瞬間に立ち会っていきます。
過去と現代に時々スリップしながら見事な回廊や大広間をさまよううち、華麗な舞踏会が始まります。
最初に出会った人は舞踏会に参加するためにやって来たのですね。

舞踏会を終えた人々が大階段をさんざめきながら降りてくるシーンは圧巻。
用事のある人は最後の15分だけいらしても、十分見ごたえあると思います。

日時 : 2016年9月11日(日)3:00〜 申し込み不要

 場所 : どろアトリエ
    (新長田アスタくにづか5番館2階奥)
      地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
      新長田駅から大正筋を六間道商店街まで南へ10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として)

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