新長田まちなか勉強会

神戸市の新長田で、映画、音楽、本、地図、芸能、あらゆる “もの” を通して、古今東西の社会情勢や歴史、背景などを楽しく勉強しましょう。表面的な出来事の背後にある大切なものを見る目を養い、みんなで話し合うことによりたくさんの異なる視点を得ることができます。実際は、わいわい楽しみながら感想を語り合いつつ社会問題に迫っていく感じ。

第17回 『シベリア物語』 〜明るい未来を謳歌する

5月のシリーズ「秀作の巨大な鉱脈 〜 “ソビエト映画”とその遺産」の鉱脈で掘り出したものは、

『シベリア物語』
Сказание о земле Сибирской
1947年 ソビエト映画
114分 
監督 : イヴァン・プィリエフ

ソ連の2番目のカラー作品になります。

 シベリア開拓のプロパガンダを含んているとはわかっていても、楽しい歌声や広大なシベリアの自然に魅せられて、明るいミュージカル作品として存分に楽しめますよ。
 物語は第2次世界大戦でモスクワ高等音楽院出身のピアニスト、アンドレイ中尉がベルリン攻撃の際、手首を負傷してピアニストとてての道を立たれたところから始まります。
 アンドレイはモスクワに復員後、音楽院のライバルや恋人が活躍しているのを見て希望を失ってしまいます。そして彼は生まれ故郷のシベリアへ行くのですが、そこでは人々が働きながら音楽を楽しんでおり、アンドレイも食堂で演奏しながら、音楽を心から楽しみ、食堂の看板娘からも好かれたりします。ところがそこに別れた恋人の乗った飛行機が不時着して…。
 この映画から日本でも「バイカル湖のほとり」や「シベリヤ大地の歌」が流行り、歌声喫茶が広まっていきました。
 歌声喫茶を知っている方は、とても懐かしいでしょうね。ぜひお越しください。
 またシベリアの素晴らしい景色や、ロシアのかわいい色彩など、歌声喫茶を知らない世代にも見どころも満載です。

 
 日時 : 2016年 5月15日(日) 3:00~ 申込み不要
 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
            地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
            新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として) 

 上映の前後に嶋田邦雄氏(ブレヒトくらぶ)による楽しいレクチャーがあります。

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第16回 『黄金の仔牛』 〜新シリーズはじまります

1年間たくさんの方にお越しいただきありがとうございました。

4月からさらにバージョンアップして、新しいシリーズに入ります。
題して「秀作の巨大な鉱脈 〜 “ソビエト映画”とその遺産」です。

なぜ <その遺産> かといいますと、ソビエト崩壊後に作られた作品も含めたいからです。

鉱脈と名づけただけあって、あまり知られていない本当にいい映画がたくさんありますよ。
どんどん発掘していきましょう。

さて、新シリーズのトップバッターは、

『黄金の仔牛』
     Золотой теленок
     2005年ロシア テレビドラマ
   1話50分 8話完結
    監督 : ウリヤーナ・シルキナ
    原作 : イリヤ・イリフ, エフゲニー・ペトロフ共同執筆

舞台はソビエト連邦ができて10年頃のお話。
詐欺師のベンデルの夢は金持ちになってリオデジャネイロに住むこと。
でもそこは社会主義の国。さて金持ちになんてなれるのでしょうか。

ベンデルは仲間たちとともに”カモ”を求めて旅に出ます。
これが抱腹絶倒の珍道中。
このドラマは、1931年に出版された原作を忠実に映像化していますが、
当時の社会主義社会の問題点・矛盾点を、作者は大いに笑い飛ばしています。

全部通してみないと、ベンデルが金持ちになってリオデジャネイロに行けたのかどうか判明しませんが、
今回は時間の都合上、第1話と第2話のみを鑑賞したいと思います。

続きを見たい方は是非声をかけてくださいね。
またその機会を設けたいと思います。

 日時 : 2016年 4月10日(日) 3:00~ 申込み不要
 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
            地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
            新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として) 

 話題提起 : 嶋田邦雄氏 (ブレヒトくらぶ)

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第15回 素晴らしい先生に酷い仕打ち。でも先生はわかってくれたはず

映画の暗黒と栄光を見つめて」シリーズ最後の映画会です。

蝶の舌
 La lengua de las mariposas
  1999年  スペイン映画  99分
  監督: ホセ・ルイス・クエルダ


 1936年、スペイン、ガリシア地方の小さな村でのお話。
 モンチョは喘息持ちのため、1年遅れで小学校に入学したため、モンチョは学校を怖がり逃げ出してしまう。
そんなモンチョを老教師グレゴリオ先生は暖かく迎えてくれるのだった。

 グレゴリオ先生は教科書だけではなく、自然の美しさや、その他いろいろなことを生徒に教え、
また高潔で、村人たちにも慕われるような素晴らしい先生だった。

 そんなころ、フランコ将軍が政権をとり、スペイン内戦が始まった。
共和派だった静かな村はフランコ軍に検挙され、親たちは身を守るためにフランコ側につく。
だが信念を曲げないグレゴリオ先生は…

 モンチョはまだ子どもで親の言うことは絶対である。

 グレゴリオ先生にモンチョの声が聞こえたと信じたい。

 戦闘シーンは全くなくても戦争のむごさを描けるのが、「映画の栄光」だと感じる映画です。
 ぜひごらんください。 

 日時 : 2016年3月21日() 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
            地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
            新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として) 

 話題提起 : 嶋田邦雄氏 (ブレヒトくらぶ)

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第14回 映画で感動しつつ自戒 〜目に見えない社会の圧力を繰り返さないために

次回映画会のおしらせです。

『死刑台のメロディ』
 Sacco e Vanzetti
1971年 イタリア/フランス合作映画  133分
監督:ジュリアーノ・モンタルド
音楽:エンニオ・モリコーネ

1920年に実際にアメリカで起こった「サッコ・バンゼッティ事件」を映画化しました。

 二人のイタリア移民ニコラ・サッコとバルトロメオ・ヴァンゼッティはもともとアナーキストではあったのですが、密告によって捕まえられてしまいました。
 ところが次々と示される嘘の証言やにせの証拠によって、二人は強盗殺人犯に仕立て上げられてしまいます。そして裁判の結果、二人は死刑判決を受け、電気椅子で死刑に処せられてしまいました。  当時のアメリカは、ロシア革命を受けて共産主義への警戒心を高めつつありました。また「新移民」と呼ばれる東・南欧からの移民の排斥運動も盛んだったのです。自分たちも元々は移民だったのに!


 世界中の人がサッコとバンゼッティを助けるための運動をしました。その時の本当の映像も使われています。
 二人は残念ながら思想弾圧と人種差別により人生を奪われてしまいました。目に見えない社会の圧力がいかに弱い立場の人を不幸にするのかと無力感に襲われます。けれどもそれを助けようとする人々もおり、汚点を映画にして二度と起こさないようにしようとする力もあるんだなと、エンニオ・モリコーネの音楽とジョーン・バエズの美しい歌声が感じさせてくれます。

 みなさんどうぞお越しください。

 日時 : 2016年2月14日() 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
            地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
            新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として) 

 話題提起 : 嶋田邦雄氏 (ブレヒトくらぶ)

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第13回 ネオ・リアリズモで描いた戦争の現実と悲しさ

2016年も引き続きいっしょに映画を楽しみましょう。

次回映画会のおしらせです。

 第二次大戦後、レジスタンスによってファシズムを倒し、共和国として生まれ変わったイタリアに現れた、ネオレアリズモ(neo-realismo)と呼ばれる写実主義的な手法を用いた映画を楽しみましょう。

『無防備都市』
 Roma,Citta,Aperta
1945年 イタリア映画  100分
監督:ロベルト・ロッセリーニ

 初めてこの作品をビデオで見たとき、画面が急に暗くなったり明るくなったりするので、あれ?知らないうちにリモコン踏んだかのなと思ってリモコン見ると、そうじゃない。じゃあテレビが壊れたのかもって思いながら見てたのですが、それも違ったのですね。

 これはスタジオも資材も戦火で焼かれて、何もない条件下で撮られた映画だったからです。
 余りもののフィルムをかき集め、つないでつないで作られました。
 照明もなく撮影はすべてロケ。加えて素人俳優の起用。こうしたドキュメンタリータッチの映像がかえって記録映画以上に生々しく、ロッセリーニ監督がどうしても描きたかった真実を伝えることに成功したように思えます。

あらすじ
 第二次世界大戦末期ドイツ軍に占領されたローマでは、レジスタンスの指導者が友人の家にやってきて、教会の神父に匿ってもらうことに。友人は恋人と結婚する日ドイツ軍に捕らえられてしまい、それを追った花嫁は・・・。
 一方指導者の恋人は寂しさのあまり、ある行動に移ります。その結果いろいろな人を苦しめることになりました。

 イタリアはネオレアリズモの手法を用いて、社会問題を客観的に描き問題提起をしました。有名な「自転車泥棒」もその一つです。

 たくさんのお越しをお待ちしています。

 日時 : 2016年1月11日() 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
            地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
            新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として) 

 話題提起 : 嶋田邦雄氏 (ブレヒトくらぶ)

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第12回 フリッツ・ラングの『M』はすべてを先取り

次回の映画会は、12月13日(日)に開催します。

『M』

 原題: 『M – Eine Stadt sucht einen Mörder』

  監督: フリッツ・ラング

  脚本: フリッツ・ラング、テア・フォン・ハルボウ

  1931年 ドイツ映画 117分


 この作品は、ドイツ初のトーキー映画『嘆きの天使』の次の年に作られたにもかかわらず、今の映画に通じるいろいろな趣向を凝らしています。
 その上ストーリーもおもしろく、なおかつ結末は今日でもその社会問題を解決するに至っていない命題を突き付け、一粒で2度も3度も4度もおいしいという映画です。

あらすじ紹介
 町では幼い少女ばかりを狙った連続殺人事件が発生しています。
 ある日女の子がまたさらわれ、殺されて発見されました。警察は犯人逮捕のため、町中のがさ入れを始めます。
 それでは商売上がったりと、コソ泥たちは自分達の手で犯人を捕まえることを思い立ちますが、盲人の風船売りは、あの犯行のあった日と同じ口笛を耳にします・・・。
 
 映画のBGMの代わりに、犯人の吹く口笛『ペール・ギュント』のメロディが効果的に使われています。また犯行シーンを映さず影を使った演出。警察と泥棒たちのせりふで引き継ぐシーン。カットで繋ぐ場面展開。チョークで背中につける「M」マークなど、どれをとっても画期的なものばかりです。
 
 後半の集団裁判では、みなさんの意見はどうですか? ぜひお越しください。
 
 日時 : 2015年12月13日(日) 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
            地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
            新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として) 

 話題提起 : 嶋田邦雄氏 (ブレヒトくらぶ)

 

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第11回 ドイツ初のトーキー『嘆きの天使』を読み解く

11月28日(土)映画会開催のお知らせです。

 前回の『カリガリ博士』では、舞台美術のおもしろさを堪能できました。英語バージョンでしたので、音楽はピアノ伴奏でしたが、ドイツ語バージョンでは現代音楽だそうです。ドイツ表現主義が倍増することでしょう。

さて、次回は『嘆きの天使

  原題: 『Der blaue Engel』

  監督: ジョセフ・フォン・スタンバーグ

  主演: エミール・ヤニングスマレーネ・ディートリッヒ

  1930年ドイツ映画 90分

 ドイツ初のトーキーを作るため、すでにハリウッドでトーキーを撮っていたスタンバーグ監督が招かれました。原作はノーベル賞作家トーマス・マンの兄ハインリヒ・マンの小説『ウンラート教授』です。

 厳格で横暴なため生徒に嫌われている高校教師が、生徒から取り上げた踊り子のプロマイドを見て、キャバレーに出かけていきます。ところが踊り子ローラの魅力にすっかりはまり、毎晩通いつめた挙げ句に彼女に結婚を申込んだところ、これが運の尽き。道化師となって一座と共にどさ回り。そしてついには・・・

 原作ではドイツの権威主義が皮肉られました。ところがそれを映像化するには検閲が通らない。そこでしかたなく、魅力的な女性の虜になってしまった男の悲劇ということにしてしまいました。だからうんと魅力的な女優に踊り子を演じてもらわなければならなかったのです。そこでマレーネ・ディートリッヒが抜擢されたんでしょうね。
 前回の『カリガリ博士』でも、オチが付け足されていました。これももちろん同じ理由です。原作のままでは脚本が検閲を通らなかったのですね。同年公開の『西部戦線異状なし』の上映も中断させられました。ドイツは映画の検閲を強化し、どんどんナチスが躍進していきます。そのようなことも併せ考えながらこの映画を見ると、もっと面白くなると思います。

 日時 : 2015年11月28日(土) 3:00~ 申込み不要

 場所 : どろアトリエ (新長田アスタくにづか5番館2階 三国志ガーデン奥)
         地下鉄海岸線駒ヶ林駅上2分
         新長田駅から大正筋を六間道商店街へ突き当たるまで10分

 参加費 : 500円 (会場使用料として)

 話題提起 : 嶋田邦雄氏(ブレヒトくらぶ)